1-66章 魔法交流会その10
「みんな、ちょっと聞いてください」
私はできる限り大きな声を出して、みんなを自分の前に集めた。
「今から、この大会を逆転に導く作戦を伝えます。でも、その前に...」
私は、手を腰の位置で重ねて頭を下げた。周りからはざわざわと声が聞こえてくる。
「今日はみんなに魔法の楽しさをこれっぽっちも教えることができませんでした。本当にごめんなさい」
私が謝ると、一人の男の子が私の前に出てきた。彼は何か言いたそうに私の方を見ている。
「お、俺たちもごめん。練習をサボってるあいつらを注意するのが怖くて、何も言えなかった。その責任を君だけに押し付けてしまってごめんなさい」
彼もまた、私と同じように深々と頭を下げた。しかし、私が皆につらい思いをさせてしまった事実が消えることはない。
「いいえ、今回の魔法交流会の趣旨にもある、魔法は素晴らしいもので、楽しいものであると伝えることはできませんでした。ですが、その代わり...」
私は、目の前にいるチームのみんなの顔をゆっくりと見まわしながら言う。
「せめて、みんなに魔法の楽しさを体験してもらうために、今から作戦を伝えます」
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「大変長らくお待たせしました。それでは最終戦の試合を始めます」
リックからの声がかかり、準備していた子供たちが一斉に球を手に持つ。しかし、ペティーたちのチームは少し、いや、かなり様子が違っていた。
「おい、あいつら何やってんだ?」
俺もその声につられてペティーのほうを見る。彼らはあろうことか、両腕をつかってあふれんばかりの球を持っている。マリンも気づいたのか、ペティーたちの奇妙な行動を眺めている。
「あんた、ペティーになんか入れ知恵したの?」
俺はマリンに向きなおって、肩をすくめる。
「いや、これはペティーが決めたことだよ」
俺はペティーなら可能な案を提案しただけに過ぎない。しかし、ペティーがその選択を選んだということは、
「ペティーはこの魔法交流会の目的を果たして、そして勝負を降りる気もないみたいだ」
そして、是認の準備が終わたことを確認してリックが片手をあげる。
「それじゃあ、最終戦を始めます。位置について。よーいスタート!!」
リックがその手を下げると、ペティーのチームの周りからあふれんばかりの魔力が膨れ上がる。
「お、おいなんだあれ...」
最終戦が始まったことも忘れ、全員が目を奪われていたのはペティーの魔法制御だった。なんということか、ペティーは自分のチームのトンプを除いた20人近い子供たちを同時に宙に浮かせて、球を入れさせていた。一見簡単そうに見えるが、対象を人にするだけで格段にレベルが上がる。安全性も考慮に入れなければいけないし、重さがバラバラなものに適した魔法制御をすることも簡単なことではない。それでも、ペティーの卓越した魔法制御と魔力量がそれを可能にしていた。
「しかし、本当にやってのけるとは...」
ペティーならできるかも、とは期待していたがまさか本当にできるとは思わなかった。そして、ペティーの神業に俺たちはあっけにとられている場合ではなかった。
「それでも、俺は俺のやり方でペティーに勝って見せる」




