1-59章 魔法交流会その3-3
「お父さん、私全然うまくできる気がしないよ...」
私は喉元まで不安が押し寄せてきてお父さんにしがみつく。でも、お父さんは少し困った顔をしながら私の頭をなでる。
「大丈夫じゃよ。しっかりやれるじゃろ。それに...」
ガジャが私の後ろ側に視線を向けたので私も後ろを向く。
「サトルとマリンも立派なに魔法を教えているじゃろ。それにわしもいる。心配せんでも大丈夫じゃ」
しきりに私のことを励ましてくれてるけど、心配なものは心配だった。普段のサトル君とマリンちゃんは...友達だから、私が教えるのが下手でもある程度許してくれているが、全く知らない子だと怒られても仕方がないと思っていた。
「ほら、みんなも待っとるぞ」
ガジャが背中を押して、慌てて前を向くとすでにたくさんの人が私に注目している。迷っていても仕方がないと私は思い、頬を叩くとよし、と気合を入れる。
「そ、それでは、この後行う玉入れのための魔法の練習を始めようと思いましゅ」
最後の最後に噛んでしまい、目の前の子たちからドッと笑いがおきる。私は顔が赤くなりそうになるのを必死に抑えて、歯を食いしばる。
「そ、それじゃあ、まずはこの球を一人ずつ取ってください」
そういって、目の前の子たちがぞろぞろと立ち上がり、目も前の箱にあるボールをとっていく。全員が球を受け取ったのを確認すると、
「そしたら、ゴールに球を入れて見せます。私がお手本を見せるので見てください」
そうして、私は球を宙に浮かせて右手でフッと手を振って、かごに球を入れて見せた。目の前の子たちからはオーっと歓声が上がる。
「よし、そしたらこれと同じことを皆さんやってみてください」
私がさあさあ、と前の方を譲ったが、子供たちは一斉に動く気配がない。私は何か間違ったことをしたのかと不安になる。
「あ、あの、みんな...もうやって大丈夫だよ...」
と声をかけたので、しぶしぶと子供たちは立ち上がり、網を囲んで円を作る。
「それじゃあ、よーいドン!!」
と言って各々が魔法を打とうと試行錯誤し始めたが、全員魔法を使うことはできなかった。
「おーい。やり方教えてくれなきゃ見本見せられもわからないぞ」
一人の男の子が私に言ってくる。今のやり方じゃまずかったか、と反省し私は円の中に入っていく。
「えっとやり方というのは、まず、球を浮かせて、籠にめがけてこう!!です」
と説明する。しかし、全員が要領を得ない様子で困り果てていた。それを見かねてかお父さんが円の中に割って入ってくる。
「今の説明だと難しいから、まずは球を浮かせることからやってみよう。重要なのはイメージじゃ。球が宙にふわふわと浮いているイメージをするんじゃ。やってみてくれ」
そういうって、みんなが球を浮かせようとすると、何人かの子が球を浮かすことに成功する。球を浮かせることに苦戦している子にお父さんは近づく。
「何がわからないんじゃ」
「んー、なんか何がわからないのかわかりません」
「ものを浮かせるイメージはできるか?」
「まあ、なんとなくですけど」
その女の子はお父さんにそう言うと、お父さんは少し考えてから彼女の方を見ると、
「もしかしたら、魔法の流れを意識できていないのかもしれない。ちょっと手を貸してみてくれ」
そう言って彼女はガジャに手を差し伸べ、その上にお父さんも手をのせる。
「この掌の上で魔法を使うイメージをするんじゃ。全身の魔法をこの手に集中させることはできるか?」
「やってみます」
彼女はそういうと目を閉じて手に魔法を集中させようと目を閉じる。5秒、10秒と経過してからお父さんはそっと手を離すと、
「それじゃあ、今の感じでこの球を浮かせてみてくれ」
彼女は球を渡され、今のでできるようになったのか?と疑いの目でお父さんを見ていたが、言われたとおりにしてみると、驚くべきことにすぐに球を浮かせることに成功していた。
「すごい!できるようになった!」
「お前さんは魔法をつかうのが初めてじゃったから魔法をどのように使うか、がわかってなかったのじゃ。でも、これで大丈夫じゃろ」
「はい1ありがとうございます!」
彼女は礼を言うとお父さんは手を振ってその場を去り、ボーっとそれを見ていた私のほうに来る。
「ボーっとしていちゃいかん。今のワシみたいにみんなに教えてくるんじゃ」
それだけ言うとお父さんは円の中から姿を消していった。私はお父さんのように人に魔法を教えられる気がまるでわかなかった。




