1-58章 魔法交流会その3-2
「はーい。まずはボールを配ってくから受け取ってね」
あたしは、目の前に座っている子供たちに段ボールに敷き詰められたボールを配っていく。子供たちはこの後行われる玉入れが楽しみなのか、そわそわとしていたり、隣の人とこそこそ話したりしている。
「はい、ちゅうもーく。じゃあ今からこのゴールに魔法で球を入れる連取をするからまずはやってみて」
あたしは、隣にある背の高い網を引きずってきて、自分の隣まで持ってくる。いきなりのことでみんなポカーンと口を開けていたが、「さあ、立って」とあたしが言うと、みんなは一斉に立ち上がって恐る恐るその網を囲んで並び始めた。
「それじゃあ、よーいドン!!」
あたしは、掛け声をかけるとみんながいろいろな方法で目の前にある網に球を入れようと頑張り始めた。ある人はちょっとカッコつけて変なしぐさをしているがうまくできず、ある人は一生懸命球を動かそうとしているが、なかなかうまくいっていなかった。
「おーい、全然できねーぞ。ちゃんと説明してくれよ」
男子の一人があたしに言ってきたので、あたしは円の中心に進みでる。
「わかったわ。じゃまずは目の前の球を浮かせてみて。」
あたしがいうと、子供たちは一斉に球をあげようとした。見た感じ、ざっと4,5人くらいの人ができている感じだった。
「はい、じゃあ今できた人は手をあげて」
数人がぽつぽつと手を上げる。マリンはその数人に目配せをする。
「それじゃあ、できなかった人は今手をあげてる人の周りに集まって。それで手をあげてる人はその人たちにやり方を教えてあげて」
そう言うと、「まじかよ」とか、「ほんとに?」みたいな声が聞こえてきたが、「さ、早く早く」とあたしが言うと、みんなは手をあげてる人の周りに集まり始めた。そして、段々とその人たちが周りの人に自分のやり方を教えていく。あたしは、集団の一つに顔をのぞかせる。
「俺のやり方はあってるかわからないけど、とりあえず、浮け―、浮け―って念じてみたらなんか少しだけ浮いたんだ」
「そんなんで浮くのか?」
「いや、俺もよくわからないんだ。みんなもやってみてくれ」
順調そうな様子を確認しながら、他の集団の様子も見る。
「浮かせるって、なんか身近なもので風船とかあるじゃん。だから、その要領でボールを上に投げて風船みたいに浮いたらいいなーって感じでやったらなんかうまくいったんだ」
「ほんとやん。俺もそれでできたわ」
「でも、これ絶対正規のやり方じゃないよな。まあできればいいんじゃね」
こちらの集団でも段々とでき始めている人が多くなってきたので、あたしはパンパンと手を叩くと、
「それじゃあ、さっき手をあげていた人は隣の集団にいって。そこでもう一回同じようにやってみて」
というと、今度はすぐにみんなが動き始めた。そして、また、みんなで教え始めるとさっきよりもさらにできる人が多くなってきたようだった。
あたしの考えはこうだった。サトルは魔法で大事なのはイメージだという。あたしもそれは間違ってもいないとは思う。でも、想像力が豊かじゃない子はイメージだけじゃ魔法はうまくいならないと思う。あたしが重要視しているのはいろいろな考え方の魔法の使い方をしておくことだと思ってる。そして、その中で自分に合った魔法の使い方を模索していくことが魔法上達への近道だと思っている。だから、あたしも自分のやり方を他人に押し付けたくなかったし、強要するつもりもなかった。何回か集団をぐるぐるさせていき、
「じゃあ球を持ち上げられるようになった人は手をあげて」
というと、全員の手が上がっていた。あたしはこのやり方に満足したように満面の笑みを作ると、
「それじゃあ、次のステップよみんなしっかりついてきてね」
あたしがそういうと、みんなが「はい!」と大きな声で答えてくれた。




