1-57章 魔法交流会その3-1
「これから魔法の基礎について教えていきたいと思います。このあとに魔法を使った玉入れ大会をするのでここでしっかり魔法について覚えてください」
「はーい」
目の前に座る子供たちは気の抜けた返事をする。教えられるのが自分と同じくらいの年齢だから緊張はあんましてないと思ったがそうでもないようだった。俺はできる限り緊張がほぐれるように笑顔を見せるように意識する。
「まず、魔法を使うに際して大事なのは自分がやりたいことをしっかりイメージすることです」
俺は最初にガジャに魔法を教わった時のことを想像する。あの時は俺も魔法に関して全然わからなかったが、今になってこれがどれほど大事か痛いほどわかる。
「今回行う玉入れはこんな風に魔法を使うのが一番いいでしょう」
俺は実際にこの後使う玉入れのゴールを持ってくる。段ボールに詰められているボールを一つ持ちあげると、それを宙に浮かして見せた。子供たちからは。「わーすげー!!」とか、「俺も早くやりたい!!」と、予想通りの反応をもらえて俺もうれしくなる。
「そんなに慌てないで。まずどのように宙に浮かせてこのゴールに球を投げ入れるかを説明します」
俺はゴールから適度に距離をあけて、自分の身長の2倍ほどあるゴールのほうに視線を向ける。俺は宙に浮かせたボールを徐々に上昇させていき、ゴールの真上に来たところでポトッと落とした。またもみんなから歓声の声が上がった。
「このように魔法を使って球を入れるには、球を持ち上げる、球を移動させる、ゴールの真上で魔法を解除するという大きく3つの動作が必要になります。まず、皆には魔法を使って、球を持ち上げる練習をしてもらおうと思います」
そして、俺はみんなに段ボールの中にある球を一つずつ配っていく。全員に配り終えると、
「それじゃあみんな。まずは自分思っている球を自分の目線まで上げてみてください」
自分の目線の前で水平に手をかざすジェスチャーをすると、子供たちが一斉に球を持ち上げ始めた。しかし、当然だがほとんどの人が球を持ち上げられなかったり、制御できなくて落としてしまったりしていた。
「これってどうやってあげるの?」
活発そうな男の子が俺に手をあげている。俺は彼のもとまで行くと、
「何ができない?」
「球を持ち上げるイメージはできるけどうまく持ち上がらないんだ。どうしたらいいかな?」
「そうだね...そしたら...」
俺は自分の右手に球を持つと、それを手に持ったまま自分の目線まで上げる。
「こうやって、球を持ったまま自分の目線まで上げる。これは魔法を使わなくてもできるよね」
「まあできるな。でも、それがどうした?」
彼も俺と同じように球を動かすが、これがどういう意味なのかは分かっていないようだった。
「球を魔法を使って持ち上げるというのは、今、手で球を持ち上げたように、魔法で球を持ち上げるだけなんだ。手が魔法になっただけで、本質的には同じことをやってるんだ」
「あーなるほど。そうしたら...」
彼は、もう一度球を凝視しながら球を浮かせようと全身に力を入れる。すると、球がわずかに上がり、魔法で球を浮かせることができる。
「おーできたできた!そういうことか、なんとなくわかってきた」
「よかった。これでもう大丈夫だね」
「おう!ありがとな!!」
彼はそういうと、俺のことを気にせず球を持ち上げることに集中し始めた。自分の教えた子がだんだんと上達していくのは、自分の成長よりも下手すると嬉しかった。普段俺たちに魔法を教えているガジャの気持ちがなんとなくわかった気がした。




