1-56章 魔法交流会その2
魔法交流会のプログラムは最終的に大きく3つの催しが用意されている。1つ目が俺たちが同世代の子供たちに魔法を教えるもの、2つ目は魔法を使った玉入れ大会、そして最後は希望者だけで行う、マリックと呼ばれる競技らしい。聞いた感じいわゆる"宝探し"である。この3つは2人がが間を縫って考えた構成であり、もちろん俺たちに異論はなかった。
「じゃあ、そろそろ始まるぞ。お前たち準備はできているか」
「うん、大丈夫よ」
「うう...なんだか緊張してきた...」
「サトル君は大丈夫よ。私のほうがうまくできるか心配」
ペティーは指揮棒を振るようなしぐさをする。マリンは気合十分と言った感じで集中しきっている。
「実際、魔法を使えない子たちがほとんどなの?」
「一部トンプのような魔法を多少使える子もいるようじゃが、ほとんどは魔法の"ま"の字も知らないような子ばかりじゃろ」
ガジャは広場に続々と集まりつつある子供たちを見渡しながらそう答えた。俺たちも準備してきたものを広場に設置していると、一人の男が俺たちに近づいてくる。
「やあ、3人とも今日はよろしくね」
優雅に挨拶する男、リック・リバースは今日も笑顔でひらひらと手を振った。
「「「よろしくお願いします」」」
俺たちが3人が挨拶を返すと、彼もうんうん、とうなずくとガジャのほうに向きなおる。
「すいません、先生。折入ってお願いがあるのですが...」
「なんじゃ、何かあったのか?」
「いえ、お願いというほどでもないのかもしれませんが...」
珍しく、リックにしては歯切れが悪い受け答えだった。彼は何やら思案した後にガジャの目を見ると、
「息子を、私の息子を魔法交流会に参加させていただけないでしょうか?」
彼の提案はなんてことない、彼の息子を魔法交流会に参加させてもらいたいというものだった。
「何か問題があるのか?」
「...うちの息子は、私がバルセルク魔法学校の教師ということもあり、幼いころから魔法を教えてきたのですが、そのせいもあって、ライアー君と同じくらい、性格に難あり、と言った感じなんですよ」
お恥ずかしい限りです、とリバースが言う姿は、普段の彼からはあまり想像できないほど自信なさげだった。
「魔法が使えるなら、今回の会は彼にとって退屈なのでは?」
「いえ、あいつはいつも山にこもって魔法の練習をしていますが、人との交流も魔法を学ぶ上で大事だ、といつも言っていて今日もウィットネスに来るように、とは言っているのですが...もし来ないなら、私が引っ張ってでも連れてきます」
「そこまでしなくてもいいんじゃないか...」
「いえ、陰で彼らの魔法の練習を見ていましたが、互いに意見交換しながら自分の苦手を克服していく姿は、本当に素晴らしいと思いました。バルセルクでもあそこまで熱心に魔法を練習する生徒はなかなかいませんよ」
彼が俺たちの努力を見ていたということにも驚きだったが、それをこんなにもうれしい言葉でほめてくれるのは素直に嬉しかった。
「しばらくここを離れます。玉入れの時までには戻ってくるので」
それじゃあ、と言って彼はまたルーラル村のほうに引き返していった。
「さあ、わしらも準備を再開するぞ」
リバースの背を見送ると、ガジャはパンパンと手を叩く。手短に、自分のセットの準備を終えると俺たちの魔法交流会の第1プログラムがスタートした。




