1-51章 羽化
そして、あれからさらに数日後、俺たちが魔法の練習に励んでいるところにガジャが現れた。
「お疲れ。もうすぐ魔法交流会の準備が終わるからその息抜きに来たんじゃ。」
「本当に!?なんだかワクワクしてきたわ」
「そうだね。私も楽しみ」
マリンとペティーは魔法交流会がもうすぐ始まることに喜んでいる。かくいう俺もほかの村の人たちとの交流は楽しみだった。
「ところで、魔法交流会はどんなことをやるの?」
俺は思い切ってガジャに聞いてみた。二人もそのことに盲点だったのか、「確かに」と顔を見合わせていた。
「ああ、そのことなんじゃが」
ガジャはよっこいせ、と地面に腰を下ろす。
「ウィットネスとルーラルの子供たちに魔法を教えるんじゃ。その過程でちょっとした遊びも混ぜながらがいいじゃろうな」
「へえー、なかなか面白そうじゃない」
「でも、魔法を教えられる人ってお父さんとリックさん以外にいるの?」
ペティーの疑問は当然のことだ。ルーラルのことはわからないが、ウィットネスでは魔法をまともに教えられるのはガジャぐらいしかいないだろう。アンでも教えられるほど魔法は上手ではない。
「誰って、たくさんおるじゃろ目の前に」
「?誰のことを言ってるの」
ガジャは、ずっと俺たちのほうを見ている。俺たちはお互いの顔をそれぞれ見合った。そして、ハッとしたようにマリンが言う。
「もしかして、あたしたちが子供たちに教えるの!?」
「まあ、そうなるじゃろうな」
ガジャは、そう言いながら自分の組んでいる足を組みなおした。俺はすかさずガジャに反論する。
「なんで俺たちが魔法を教えることになったんだ?」
「理由は2つある。1つ目は、さっきペティーが言ったように、まともに魔法を教えられるのがリックさんとワシしかおらんから。2つ目は、お前たちが教えた方が都合がいいからじゃ」
「都合がいいっていうのは?」
ガジャは地面から立ち上がるとズボンの土を手で払う。
「お前たちが教えるのはほとんどが自分と同世代の子供じゃ。子供たちが魔法を習う過程でつまずくところはお前たちとそう変わらんはずじゃ。お前たちが教えた方がそういう点において、教えられる側もやりやすいんじゃ」
確かに、勉強などにおいても人に教えられることで、初めてその分野を完璧に理解していると言われるほど、人に何かを教えて理解させるというのは難しい。確かに筋は通っている。筋は通っているが...
「私たちに...できるのかな」
俺達の不安を代弁するかのようにペティーが言う。ガジャは少し目を伏せると、俺たちに近づいてきてその場でしゃがみこんだ。
「大丈夫じゃ。自分に自信を持て。お前たちはそこら辺の魔法師よりよっぽど魔法がうまい。ワシが保証する」
そういってガジャは俺達をまっすぐに見つめる。俺はこの時、なんとなくだったが、ガジャの期待に応えたかった。魔法のことに関して俺にいろいろと教えてくれたガジャに、俺は恩返しのようなものをしたかった。
「...俺はやるよ」
「え!?」
ペティーとマリンは俺の方にとっさに振り返る。
「根拠のない自信だけど、俺は自分が思っている以上にすごい魔法師なのかもしれない。2人もそうだと思うんだ。だから、一緒に引き受けてくれないかな」
2りはしばらく俺の言葉を吟味するように黙り込んでいた。そして、
「しょーがないわねー。サトルがそこまで言うなら付き合ってあげるわよ」
「私も。サトル君と一緒ならうまくできると思う」
マリンはやれやれ、と言った感じで、ペティーは柔らかい笑顔でそれぞれ答えてくれた。
「よし、それじゃあ今日も練習頑張ろう!!」
「おー!!」と3人で叫ぶのをガジャは静かに見守っていた。




