1-50章 気にしない
それから2週間の間、俺たちは一生懸命魔法の特訓に励んだ。ガジャもたまに俺たちの魔法の特訓に付き合ってくれたが、ウィットネスの開催に急遽変更になったことに際して、村長と話し合った末村人と一緒に街での作業に駆り出されることが増えていった。俺達も手伝うよ、と申し出たのだが、
「お前たちはだめだ。魔法交流会のためにしっかりと魔法の練習をしとくんじゃ」
とガジャに念押しされたので俺たちは魔法交流会の準備を手伝うことはしなかった。そのせいもあって、いつもより3人でいる時間が増えたように感じる。最近は、ペティーの顔にも笑顔が戻ってきて、魔法の練習にも精が出るようになった。
「ペティー、長距離魔法のことなんだけど」
マリンはペティーのほうにスタスタと歩み寄る。
「どうしたのマリンちゃん」
「いや、どうしても遠くの標的のものを移動させるのが難しいんだけど何かコツとかある?」
長距離でのモノの移動に関する魔法はかなり高難易度の魔法だった。俺もマリンほどできないわけではないが、10メートルほど離れるともう難しくなる。それをペティーは100メートルの距離でも難なくこなすことができる。
「えっとねー...」
ペティーは困ったように首をかしげると、遠くの方を向きながら手を前にかざす。
「遠くの方に集中しながら、こうやって...こう!ってこれじゃわからないよね...」
これにはさすがのマリンもあきれ顔だった。天才肌のペティーにはこれをどのように魔法として自分の体に落としているのかを言語化するのが難しいそうだ。それでも前より精力的に説明してくれようとしているだけでも俺たちはありがたかった。
「ふう。そろそろ休憩しましょ」
4時間ほど魔法の練習をしたところで俺たちは昼休憩をとることにした。俺たちはいつも山のてっぺんのウィットネスが見渡せる位置から昼飯を食べている。
「ところで、気になってたことがあるんだけどさ」
俺は目の前の卵のサンドウィッチに手を伸ばしながら二人に聞く。
「バルセルク魔法学校って何歳でも入学できるの?」
なんとなく考えていた疑問を二人に言った。
「原則としては何歳でも入学することはできるよ」
「でも、若すぎたらそもそも魔法師として成長しきれてないから受からないし、年を取りすぎても魔法師としての才能が開花しきれずに挫折してしまうっていうのが大半だわ。だから、適正としては12歳から15歳が適正だとは思うわ」
マリンはサンドウィッチを頬張りながらそう答えた。となると実質的な年齢制限というものはなく、だれでも入学できるというわけだ。
「ところで、二人って今いくつ?」
マリンは口元をぬぐうと、俺とペティーに質問する。考えたこともなかったが俺はいま何歳なのだろう。考えてみればこの世界での誕生日も俺はわからない。
「あたしは12」
「私は11歳。マリンちゃんのほうがお姉さんだったんだね」
「ペティーこそそんなにしっかりしてるし魔法も上手なのに私の一個下だったんだ。」
「うんうん、そんなことないよ。マリンちゃんのほうがしっかりしてるし」
二人のやりとりを話半分に聞きながら俺は何気なく空を見上げた。ところどころに雲がかかっているが、透き通った青い空が目の前で広がっている。
「あんたは何歳なのよ」
そして、二人の視線が俺の方に向く。何やら変な緊張が俺の中で走る。
「俺は...13だ。2人より年上だな」
「はっ。だからって敬語なんか使わないわよ」
「私より2歳も年上...サトル君、私同じ年齢だと思ってた」
「まあ、ほとんど変わらないよ。年齢のことは気にしないでいつも通り接してほしい。」
俺は二人にそう言うと、二人はそれぞれ首を縦に振った。
「さて、休憩は終わり。魔法の練習の続きを始めましょ」
「ああ」
「うん!」
俺とペティーはそれぞれ返事をする。ウィットネスから正午を知らせる鐘の音がかすかに聞こえてきた。




