1-48章 分岐点
「先日はどうも、うちの領主があなた方に失礼を働いたことをまず謝らせてほしい」
ローランとリックは俺たちの正面座るなり、深々と頭を下げる。
「こちらこそ、少し大事にしてしまって申し訳ない」
「とんでもない。今どきの世の中でギフトの有無で世間の立ち位置が決まるわけでもありませんし、ギフトがなくても魔法の習得を頑張っている子供たちはたくさんいます。先生がいたころはまだまだギフトに対する偏見も多かったでしょうけど」
先生、と呼んでいるのはバルセルク魔法学校では、ガジャは教師として働いていて、リックはその名残で彼を先生と呼んでいるのだろう。
「それでお話というのは、近頃開催される魔法交流会のお話でしたよね。僕もローランから軽く話は聞いているんですが...」
「ああ、そのことじゃが...」
ガジャは、改めて姿勢を正し、リックのほうをまっすぐに見つめる。
「ぜひ、お主と一緒に魔法交流会を行いたい。手伝ってくれるか?」
「はい。もちろんお手伝いさせてください。バルセルクであなたの名前を知らないものはいません。あなたと一緒にこのような形で仕事ができるとは身に余る光栄です」
「よせ、そんな大したものではない」
ガジャは一口で目の前に置かれたお茶を飲み干すと、テーブルに手をつきながらよっこいしょ、と言って立ち上がる。年季の入った茶色のテーブルはメキメキと鈍い音を立てる。
「ちょっと娘を呼んでくる。お前さんなら会わせても大丈夫だろう」
「娘さんですか。ぜひお会いしたいです」
薄くリバースは笑い、それにガジャがうなずくとガジャは2階に上がるために廊下に出て行った。ガジャが出て行ったのを見送ると、リックは俺達を交互に見る。挨拶した時以来、彼は俺たちの顔を初めて見たように思う。
「君たちは先生の教え子なのかい。先生の魔法の教え方は上手だろう」
「そうですね。教え方は丁寧で毎日勉強させられることばかりです」
「私たちはバルセルクに入学するために、ガジャさんたちと毎日魔法の特訓を頑張っているんです」
マリンの言葉に、リバースは少し驚いたように口を開ける。
「君たち、バルセルクに入学しようとしているのか?それはすごいね。では、先生の娘さんと3人でバルセルクを目指しているのかな?」
と話の流れ的に来るんじゃないか、と思われた質問が飛んでくる。二人して渋い顔をして黙り込んでいると、「ん?どうしたんだい?」とリックはちょっと困ったように苦笑いをした。俺はマリンのほうを見ると、「あんたが言いなさいよ」と言いたげな目で睨まれたので、俺はリックにペティーがギフトを持っていないこと、そして、そのせいであのような出来事が起きたことを説明した。その間、リバースは真剣に俺の話に耳を傾け、時折相槌を打ちながら話を聞いていた。
「なるほど。それは災難だったね」
リバースは目の前の茶飲みを一口すすると、居間の扉が開き、ペティーとガジャが入ってくる。
「こ...こんにちは...ペティー...です。」
「どうもお邪魔しています。リック・リバースと申します。以後お見知りおきを」
彼は素早く立ち上がり優雅に一礼をした。ペティーはそれに倣って控えめにお辞儀をすると、ガジャと一緒に席に着いた。
「今お二人から先日の話を少し聞かせていただいたんですよ」
「ああ。そうじゃったのか」
俺の隣に座ったペティーはあからさまに暗い表情になる。
「それから、お二人がバルセルク魔法学校を目指していることも」
そういうと、彼は足がしびれてきたのか、もぞもぞさせながら足を崩した。
「そのことについて、みなさんの耳に入れておきたいことがあるのです」
彼は、目の前に座る俺たち全員の目を見渡して、語り始めた。




