1-45章 再び
俺達は重い足取りでパチュリ家を後にした。門までの長い通路でこの敷地からさっさと出れないことがとても苦痛だった。マリンはペティーの隣でしきりに「大丈夫?」と声をかけている。「うん...」と涙声で答えるペティーの声を背中で聞きながら、俺はただただ情けない気持ちでいっぱいだった。あんな散々な言われようで相手が地主だか貴族だか知らないが、言い返さなかった自分に腹が立った。これではあの時かばってあげられなかったペティーに顔向けができない。そう思っていた。
長いパチュリ家の通路を抜けて門をくぐると、近くにいた何人かのルーラル村の住人が駆け足でこちらに近づいてきた。
「おい、あんたたち大丈夫か?そっちの嬢ちゃん、えらい泣いてるけど」
「大...丈夫ではないですけど、先方と少しもめてしまって」
村人の一人が話しかけてきたので、ガジャが応対をする。「チっ、やっぱりあいつらか」軽く舌打ちをすると、男は俺たちに向きなおる。
「パチュリの野郎はとんだギフト至上主義でね。ギフトはおろか魔法も使えない俺たちは日々会うたびにあいつらから罵倒の言葉を浴びせられるんだ。それをこんな嬢ちゃんにまでやるなんて頭イカレてやがるな」
吐き捨てるようにパチュリ家の扉にペッと唾を吐いた。そして、男はペティーに近づいて彼女の前で膝まづくと、「大丈夫だったか?」と声をかける。ペティーは、短く悲鳴を上げるとマリンの後ろに隠れてしまう。
「ちょっと、いきなり近づいたら怖いと思うじゃない」
「す、すまない。悪気はなかったんだ。今は男の俺が近づくのは配慮に欠けていたな。申し訳ない」
「ご、ごめんなさい...」
「い、いや謝らないでくれ。こっちこそ変に気を使わせて悪かった」
男は片手で頭の後ろを掻きながらペコペコと謝った。ひとしきり謝ったあと、「あいつらと魔法交流会のことについて話してたのか?」と男は聞く。
「そうだが、それがどうした?」
「やっぱりそうか...そのことで少し話があるんだがいいか?」
男がガジャの前で手を合わせたので、ガジャもそれを無下にできなかったのか「なんじゃ、言ってみ」と先を促す。
「実は俺の息子の友達の父親がバルセルク魔法学校で教師をやってるんだ。そいつとあんたで魔法交流会を開きたいという話を前したんだ。あいつらとの取り決めが破綻したなら俺達と一緒にやらないか」
男が持ちかけてきたのは、さっきご破算となった魔法交流会を自分たちと一緒にやろうという提案だった。確かに、俺も魔法交流会をやりたい気持ちがあったが、さっきのこともあって正直どうでもいいという気持ちが強くなっていた。ガジャは慎重に男の言ったことを吟味しているようだ。数秒黙り込んだ後、
「少し、考えさせてほしい」
とガジャは男に行った。男はさして残念そうにもせず、「わかった」というと、
「3日後に俺とそいつでウィットネスのほうに向かう。その時までに結論を出しておいてほしい。ああ、あと俺の名前はローラン。いろいろあって言い忘れていたな」
とローランは言うと「それじゃあ」と言ってその場を立ち去った。再び持ち上がった魔法交流会の話だが俺は今の話はほとんど右から左に流れていた。終始落ち込んでいるペティーの姿を俺はただ眺めることしかできなかった。




