1-43章 退屈
俺達は正面のでかい階段を上がって右手にある応接室のようなところに通された。応接室の中にもピーターの好みなのかはわからないが、甲冑や片手剣、様々な形をした盾などミリオタか、と言わんばかりのセットが置かれていた。真ん中には部屋の4分の1を閉めそうなほどの大きな茶色い机と両脇に白い光沢が目立つソファが1台ずつ置いてあった。ピーターがそのまま奥に座り、その次にライアーがソファにドカッと腰を下ろす。俺たちはその反対側に腰を下ろした。
「今日もわざわざここまでご足労いただきありがとうございます。ガジャ先生」
「前置きは結構。すぐに魔法交流会の話し合いをしよう」
面倒なピーターの無駄話を聞かされる前にガジャが先手を打つ。普段からこうやって前置きをして大事な話を引き延ばす癖があるのだろう。俺はちらと正面に座る俺達と同年代の少年であるライアーを見る。領主の息子らしい癖のない紺のシングルスーツとパンツにそれより少し明るい青色のネクタイを首に巻いている。茶色い革靴は使用人にでも磨いてもらているのかピカピカと輝いていた。また、彼らはギフト持ちだと聞いているが、全身スーツでおおわれているため、どこに刺青が刻まれているかはわからない。
「こちらとしては、魔法を使ったこともない初心者の子供たちも楽しめる催しを検討しとるんじゃが...」
「そんなものどうだっていいわい。魔法が使えないものなんて放っておけばいい。魔法が使えることを前提とした交流会が私はやりたい」
「...」
俺が適当にライアーを観察している間に話はぐんぐんと進んでいる。しかし、議題は魔法初心者にも楽しめるプログラムを作るか、という問題でガジャとピーターは押し問答をしているらしい。話はさっきから平行線をたどっている。隣に座るマリンは話の内容にいらいらしているのか、前に座る二人をにらみつけながら貧乏ゆすりをしている。その隣に座っているであろうペティーの姿はこちらから見ることはできない。
「そこをどうにかできませんかガジャさん。私の息子はこの日のために町中のあらゆる魔法教師の手を借りて一生懸命頑張ってきたんですよ。息子の頑張りを平民に披露するために魔法交流会を開くのは間違っているでしょうか?」
「あなたの息子の自慢大会がこの会の目的ではない。そこをはき違えとるからこの議論は終わらんのじゃ」
「私がわざわざ大金を払ってこの会を開いておるのだから、どういう取り決めをしても平民は不平不満を口にすることは許されない。違うかね?」
横柄な態度を崩さないピーターはニヤニヤしたままガジャに言う。要するにこいつも自分で言っていたが、自分の息子を周りに自慢したいがために魔法交流会を行うと言っているのだ。ガジャが苦労しているのも無理はない話だった。
「ガジャさんたちも少し話過ぎて疲れただろう。少しお茶でもどうでしょう」
「入れ」、とピーターが言うとメイド姿の使用人が「失礼します」と言い部屋に入る。片手で持ったお盆の上にあるお茶を運んできて、俺たちの目の前にそれぞれ置いた。彼女はすぐに「ごゆっくりどうぞ」とお辞儀をするとすぐに部屋から退室すると、ライアーは目の前にあるお茶を一気に飲み干した。ピーターもお茶に口をつけるが、こちら側は誰も一切に口をつけない。このことにピーターは特に指摘はしてこない。
「ところで、これは雑談なのですがね...」
ピーターがお茶をテーブルに置くと、何やら話始める。俺は何か嫌な予感がして勝手に身構える。
「おたくらの子供たちはどんなギフトを持っているのかね?」
ギフトのことを聞かれた際は、俺は頭の中で勝手に熱くなるような感覚に襲われた。




