1- 42章 徒労
ルーラル村の第一印象はとにかく人がいっぱいで活気があふれている村だということだった。決してウィットネスが廃れていて活気がないというわけではないのだが、どうしても高齢化と人口減少ののしわ寄せもあって、比べてしまうと見劣りしている感は否めなかった。
現在、俺たち一行はルーラル村に立っていた門番、改めパチュリ家の使用人ににつきしたがって、パチュリ宅へと向かっている。ガジャは何度か出入りしているので、使用人とも面識があったのか、特に疑われることもせず、ルーラル村に入ることができた。
ルーラル村の活気があると思った一番の要因は、道行く途中で大道芸や演奏など娯楽を披露している人がたくさんいたことだった。都会の人がたくさん集まる駅や、外国の道端でよく自分の芸を披露している人を見かけることがあるが、実際にそのようなことがルーラル村では行われていた。その芸を見るために子供からお年寄りまで、はたまた仕事中の大人たちまで仕事をしながら演奏を聞いたり、芸を見たりしていた。
しかし、今日という日に限ってそういう好奇な視線は芸者の人ではなく俺たちに向けられた。服の感じが少し違ったり、パチュリ家の使用人がガジャと子供たち3人を連れて歩いている様子はさぞかし不思議に映ったことだろう。
みんなから注目の的にあったのもあって、ペティーはずっと俺の陰に隠れて、腕にしがみついて放さなかった。俺はこのことに関しては無論問題ないのだったが、不特定多数の人間に注目を浴びているという感覚は、なんだかとてつもない疲労感を呼び起こさせた。
「こちらがパチュリ様の邸宅でございます」
使用人の一人が案内した屋敷は確かにその土地の領主と呼ぶのにふさわしい立派な邸宅だった。明らかにほかの家とは一線を画す西洋風の見た目をした建物で、玄関に行くまでの長い道やその横に広がる生い茂った芝生、ダメ押しに大きな鉄の扉とこれでもかと自分の家を大きく見せている家だった。
「ふん、しょせん金持ちの道楽よ」
「わあ、すごい...」
「...」
ひねくれているマリン、素直に見とれているペティー、見慣れているのかノーリアクションのガジャとそれぞれが三者三様のリアクションをとっていた。ちなみに俺はマリン寄りの意見を持った。
「玄関までご案内いたします。」
さっきとは違う使用人がそういうと、二人は大きな鉄の扉を開けると俺達を中に通した。俺達4人が並んで歩いても大丈夫なほど広い通路を歩いて、木でできているであろう縦3メートル横6メートルのどの扉を二人が開ける。
「おお...すげえ...」
先ほどは偏屈な感想を持ったが、実際に邸宅の中に入った俺は素直に感嘆の声を漏らした。正面には2階に続く階段が設置されており、見える範囲でも4つの扉が前と左右にそれぞれ備わっていた。天井には馬鹿でかいシャングリラが飾られており、入って左手には明らかに邪魔だろうと思われる銅像が堂々と鎮座していた。
「これ人が飛んでいる像ね...」
それはパチュリ家のギフトである飛翔・鷹狩を象徴したような銅像のようだが、銅像自体の完成度は高く、この家とこの場所に配置されていなかったらもっと気品あふれる品だったのだろうと俺はひそかに思った。
「おやおや、皆さんお揃いで」
2階から癇に障るような男の声が聞こえてくる。変に広くて音が反響するせいか、不快感がましましだった。男とその後ろをついてくる子供がドスドスと醜い足音を立てて、廊下を歩いてるのがわかる。
「ただいま戻りました。パチュリ様」
二人の使用人が同時に跪いて礼をすると、男は会談の一番上で止まりニッと不気味に笑った。
「こちらがガジャ様とウィットネスからの使いの方でございます」
「ご苦労。下がっていいぞ」
男はそういうと、二人の使用人がもう一度深くお辞儀をすると、その場から立ち去り俺達4人と目の前の男二人だけになった。
「こんにちはガジャさん。そして初めまして君たち」
男は自分の鼻ひげを自慢げにさすりながらそういう。
「私は、ピーター・パチュリ。以後お見知りおきを」
この家の家主であるピーター・パチュリと、その息子ライアー・パチュリはにやにやと俺達を見て笑っていた。




