1-39章 展望
それからというもの俺たちは、魔法交流会のための準備と練習に明け暮れていた。ペティーの話だとこの魔法交流会はガジャの取り計らいでウィットネスの子供たちも参加できるようにしたらしい。ガジャの話では隣村の領主ピーター・パチュリの息子であるライアー・パチュリがガジャが元バルセルク魔法学校の教師であるということを聞きつけたということもあってこの話が出来上がったらしい。こういった取り決めは村長同士でで決めることが多いそうなのだが、ウィットネスの村長は高齢なのもあり、魔法の心得もあるガジャが今回の魔法交流会のウィットネスの代表ということになったらしい。
「手でこういう銃の形を作って魔力を放ったがほうが分かりやすいじゃん」
「は?ジュウって何よ?こうやって手のひらを開いて魔力を集中させた方がやりやすいじゃない」
「精密に的を射抜かなきゃいけない的あてだったら、拡散するかもしれないそんなやり方より、こっちのほうがいいだろ」
「あたしはこっちのやり方のほうがやりやすいからいいのよ」
「まあまあ...二人とも落ち着いて...」
俺とマリンは毎日のように魔法の出し方や効率的な出力について言い合いをしていた。単純な知識の違いや価値観の違いのせいか、俺たちの意見が合うことはほとんどと言っていいほどなかった。そのたびにペティーが俺達のことをなだめては場を収めているといった感じだった。
「ほんとサトルとは毎回意見が合わないわね。毎回あたしのほうがいい案を出してるのに」
「俺のほうが理論的で効率的で分かりやすいだろ。マリンのやり方は大雑把でマリンにしか理解できないやり方だよ」
「何よ!私のこと馬鹿にしてるわけ!?」
「そういうことじゃないけど...」
般若のごとき形相で俺のことをにらみつけてくるマリン。なるべく穏便に会話をしたいのだが、マリン相手だとどうもうまくいかなかった。俺たちのやり取りを見てどういうわけかペティーはくすくすと笑いだした。
「ど、どうしたのペティー?何かおかしかった?」
マリンはペティーのことになると俺の対応とは対称に急に優しくなる。まあ、これはおっとり系のペティーにはさすがのマリンも強くは出れないのだろう、という俺の読みだが。
「いや、ちょっと...」
ペティーは口元を抑えながら上品に笑っていると、
「二人とも、とっても仲良しさんだなーって」
「「はー!?」」
俺たちは2人してお互いの顔面に向かって指を突き付ける。
「「こいつと仲良しなんてとんだ屈辱だ/よ!!」」
俺たちはペティーに対して必死に抗議の弁を立てる。確かにかくかくしかじかで一つ屋根の下一緒に生活しているが、間違ってもマリンとは仲良しなんてものではない。しかし、ペティーは口に当てていた手を引っ込めると、
「そういうところよ。二人ともとても息ピッタリ。とってもお似合いよ」
と嬉しそうに言った。ハッとマリンは何かに気が付いたのか、俺に近づいてきては右足で思いっきり俺のケツを蹴ってきた。
「ってーな。何するんだよ!!」
思いっきりマリンの方をにらみつけた直後に、マリンは俺の体を力強く押した。俺はバランスを崩して、ペティーとつい体をぶつけてしまう。
「ご、ごめん...」
「う、うん平気だよ...」
2人してお互いに顔を背ける。マリンの方を見ると俺たちの方を見てニヤニヤしていた。俺はせめてもの抵抗としてマリンのことを思いっきりにらみつけてやった。ペティーはそれを軽く受け流し、胸の前でパンパンと手をたたく。
「さあ、魔法交流会まであまり時間はないみたいだし、私達も活躍できるように精一杯頑張りましょ」
まるで自分が仕切り役とでも言わんばかりにこの場を取り仕切るマリンのことを恨めしく思いながら、俺たちはまた魔法の練習を再開した。




