1-34章 バルセルク魔法学校
「バルセルク魔法学校はサトルには前に少し話していたが、わしが昔教鞭をとっていたこの世界で最も優秀な魔法師養成施設じゃ」
ゆっくりとガジャは俺たちにバルセルク魔法学校について話しだした。
「ここの入学試験は一年おきに行われる。そして、バルセルク魔法学校の大きな特徴は学年という概念がないことじゃ。ほかの学年は1年、2年という区分があるが、あそこにあるのは1期生、2期生といういつ入ったかの区分だけで、時には上級生、下級生とも魔法を学ぶこともあるということじゃ」
学校とは名ばかりで、学年という枠がないことは俺にとっては驚きだった。大学もある種、学年にとらわれない授業もあったりするがバルセルク魔法学校はそれともまた違うのかもしれない。
「そして、バルセルク魔法学校がこのやり方を採用する理由の一番大きな要因は、優秀な魔法師の人手不足によるものじゃ」
そういうと、ガジャが右手で一つ指を立てた。そして、そのままもう一つ指を立てる。
「二つ目は他学年との交流の機会を増やすためじゃ。学年という枠を壊して授業をすれば、いろんな考えの魔法師と出会うことができるからな」
確かに、その考えには一理あった。優秀な低学年の魔法師や先輩の経験豊富な魔法師の人と一緒に授業をして、切磋琢磨していける環境は俺にとって理想そのものだった。
「そして、この学校の最大の特徴は、卒業までの日数に制限がない言うことじゃ」
この話に俺たちは首を傾げた。卒業までの日数に制限がない、という言葉に違和感しかなかった。いまいち要領を得ていない俺達を見て、
「要するに、ルール上1日とかでも卒業できるということじゃ。まあこれじゃバルセルク魔法学校に入った意味がよく分からなくなるがな」
俺達は声をそろえて、「えー!?」と目を丸くせざるを得なかった。さすがに嘘だよなー、という顔でガジャを見たがガジャは真剣な顔を崩さなかったから、多分マジなんだろう。
「ちなみに歴代で最も早く卒業した人って誰?」
驚きの余韻が消えないまま、俺は恐る恐るガジャに質問する。ガジャは自分のあごひげをさすりながら、
「そうじゃな―、もう長い間あっちには戻っとらんからわからんが、わしが教壇を降りた時まではワシが一番早く卒業していったはずじゃ。たしか1年くらいで卒業したな」
その驚愕のスピード卒業ぶりに俺は失神しそうになる。仮に大学を1年で卒業できようもんならガジャは相当魔法師としての才能があったのだろう。
そしてマリンも、「あたしもいい?」と元気よく手を上げる。
「卒業後の進路はみんなどんな感じになるの?」
マリンの質問は俺も気になっていたことだった。研究者になるといった手前、卒業後に現世への戻り方だったり、魔法の研究をすることは俺にとって最も重要なことだった。
「特に希望がなければ、大体、国立魔同部隊「夜の獅子団(ナイトメア・レオ」)」に入隊することになる。しかし、自分の夢があるならばその職に就くこともできるし、前サトルが言っていた研究者になるという道ももちろんありじゃ。魔法師で食いっぱぐれるということはまずないから安心せい」
研究者として生きていけるのなら俺としては願ったりかなったりだった。しかし、あんだけ現世では研究者としての自分が嫌だったのに、異世界にまで来て研究者を目指すなんて、これがいわゆる「職業病」というやつなのだろうか。
「あ!そしたらそしたら!」
マリンは何かを思いついたのか俺とペティーの両方の肩に腕を回すと、
「あたしたち3人でバルセルク魔法学校を目指しましょ!あたしたち3人なら怖いものなしだわ!」
そういうと、マリンは俺から離れてペティーのことを抱きしめる。たしかに、ペティーとマリンは俺より魔法の才能があるし、バルセルク魔法学校に行けるだけの素質はあると思った。
しかし、ペティーはマリンを引き離し、力なく笑うと、
「私はバルセルク魔法学校にはいっしょに行けないの...ごめんね」
「え!?それってどいうことよ?」
二人のやりとりを聞いて、ガジャは一人苦い顔をしているのを俺は見逃さなかった。話すかどうかを迷っていると、ペティーが先に「お父さん、私から言うよ」と先を制する。
「実はね、お父さんから先に聞いてたんだけど、バルセルク魔法学校の試験を受ける唯一の条件が"ギフト"を持っていることなんだって」
俺とマリンはペティーのその悲痛な言葉にかける言葉が見つからなかった。




