1-33章 High Voltage
「大丈夫だった?30分くらい森の中に入っていってから出てこなかったけど、何かあったんじゃないかって心配だったよ」
ペティーは俺達二人を見つけると大きく胸をなでおろす。
「大丈夫だよ。特に怪我とかもしてないし」
「まあ服は取っ組み合ったから結構汚れっちゃったけどね。帰ったらアンに怒られるわよ」
帰るや否や、ぷんすか怒っているアンの姿が手に取るように浮かんだ。俺とマリンのやりとりにペティーがくすくすと笑うと、
「お父さんもなんだかんだ心配してたんだよ。いつも通りの仏頂面だけど」
ペティーが小声で俺たちに教えてくれると、ちょうどよくガジャがこちらにのしのしと歩いてきた。多分今の会話は聞こえてはいなかっただろう。
「それでどうじゃった模擬戦闘は。なかなか有意義なものだったじゃろ」
「そうね。サトルもなかなか頭が良くてあたしも危うく負けるところだったわ」
「そうだなー。俺もまさか負けるとは思わな...ん?」
俺はマリンのほうを見る。「何よ」とマリンは平然と言ってのける。
「何言ってんだよ。勝ったのは俺だろマリンは俺になすすべなくやられただろ」
「サトルこそ何言ってんのよ。あたしがあんたがこそこそ隠れてるのをあぶりだしてまんまとやれたじゃない」
こいつ、俺にやられたのがそんなに悔しいのか、せめてガジャとペティーの前だけでも見栄を張ろうとしてるのか。このクソ性悪女め...
「俺が勝っただろ!!」
「勝ったのはあたしよ!!」
俺とマリンで顔を突き合わせてお互いにらみ合う。漫画の表現でよくあるが本当に俺たちの前でバチバチと火花が散っているようだった。俺たちは息を合わせるようにペティーのほうを向く。
「「ペティーはどっちを信じる?」」
俺達から詰問されると、ペティーは困ったように「えーっと...」と二人を交互に見ている。
「勝ち負けなんて些細な問題じゃ。誰も見とらん二じゃからそんな議論は不毛じゃろ」
ペティーの困り様を見かねてか、俺達の前にガジャが割って入る。
「いいか。今回模擬戦闘を行ったのは魔法による対人戦のイメージじゃ。いかに素早く自分のやりたいことを考えて、アウトプットできるかの訓練じゃ。お前たちはそれができたか?」
ガジャは俺たちに向かって問いかける。教師経験があるからなのだろうか、話のつかみや俺たちにどういえば応えやすい雰囲気になるか心得ているように思う。
「俺は...魔法はあまり使わなかったな。籠城戦みたいなことしてたし...」
「あたしもサトルがずっと隠れてたから最初以外ほとんど使ってないわ」
俺達二人の反応をみて、ガジャは頭を抱えた。「いいか」とガジャは前置きをすると、
「二人がどんな戦い方をしたか知らんが、これは魔力訓練の一環であることを忘れちゃいかん。魔法は使わないと使い方を一生覚えることはできん。実践で魔法を使ってこそとっさの判断で魔力行使が上達するんじゃぞ。よいな」
俺達は一つうなずくと、ガジャもうなずき返した。
「少し休憩したらまた特訓を開始するぞ」
そういってガジャは背を向けると元居た場所に戻ろうとする。その時、俺は頭の片隅にあって模擬戦闘中は忘れてたことを頭の中から引っ張り出す。
「そういえば...ガジャが言ってた模擬戦闘をする理由みたいなのって何?一つはマリンが俺と戦いたいからって話だったけど」
ガジャは足を止めると「そうじゃった」と自分の薄くなった白髪をポリポリかくと、模擬戦闘をやる経緯に至ったもう一つの理由を話し始めた。




