1-32章 感想戦
「へへ。この勝負俺の勝ちだな」
俺はマリンにタックルして、マリンを抑え込む。マリンは必死に俺から逃れようとする。
「させない!!」
俺は素早くマリンをうつ伏せにさせると、右手でマリンの右の肩甲骨を抑え左手を固める。マリンは思うように体を動かすことができない。
「ちょ、ちょっとその手離しなさいよ!!」
必死にマリンは抗っているがもちろん逃れることはできない。昔、某ヤクザ系ゲームをやっていたので、なんとなく固め技のようなものは分かっていた。記憶な曖昧な中、やってみたら以外にも成功したのだ。
マリンはしばらくして諦めたのか、急に体の力を抜いた。
「降参、降参よ。私の負けでいいわ」
マリンから俺は降参の言質を取った。
「自分の魔法力を見誤ったね、マリン」
俺はマリンから両手を離して、マリンのことを開放する。全身についた土を払いのけると、俺の方に振り向いてきた。マリンはジト目で、
「それ、どういうことよ」
左手を腰に当てて、「どういうこと?」というように聞いてきた。俺は地面にどっかりと座るとこう答えた。
「才子才に倒れる。俺がいたところでは、今のマリンはそういう風に言われるよ」
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俺とマリンは一緒にガジャとペティーが元居た方向に向かって並んで歩きだした。道中では、感想戦と呼ぶべきなのか、マリンと今の模擬戦闘に関して意見交換をしていた。
「じゃあやっぱり、森の中で迷ってガジャの方に戻れなかったのか」
「そう、まあ戻り方が分かってたら私が絶対勝ってたけどね」
「負け犬の遠吠えだな、諦めて負けを認めなよ」
「なによ!あたしのこと馬鹿にしてるの!!」
マリンは俺の両の頬をグイと引っ張ってくる。俺は「痛い痛い!」と必死に抗議したが、よっぽど悔しいのかマリンはなかなか放してくれなかった。木々の隙間から漏れる光から今の戦闘がわずか数分の出来事だったのだと分かる。やっぱ物事に集中していると、時間間隔が狂ってしまう。こんな感覚はなんだか懐かしい感じがした。
「そんなことより...」
マリンはやっと俺の頬から手を離すと、急に思い出したように人差し指を一つ上げると、
「さっきサトルが言ってたサイシなんとかとかマケイヌが何とかって何よ?初めて聞いた言葉なんだけど」
右手で頬杖をついて首を傾げるようにつぶやいた。俺はなんと説明するか悩んだ挙句、
「俺が昔いた地域で使われていた短い言葉で意味を伝える"ことわざ"っていう文化だよ。マリンたちがいるここらへんじゃあまりよく聞かないと思うけど」
「"コトワザ"...でも、まったく意味が分からなかったわ」
「無理もないよ。主に俺のいたところでしか使われていたかったからね。暇なときに教えてあげるよ」
「ほんと!?ペティーも一緒に誘いましょ。勉強は嫌いだけどサトルが教えてペティーと一緒ならきっと楽しいわ!」
マリンは両腕を広げて、目を輝かせながら答えた。
それから2人のところに戻るまでは俺の東京にいた頃の話や、ことわざについて少し教えてあげた。マリンは俺が教えた中で、能ある鷹は爪を隠すが好きになったらしい。マリン曰く、「実力のあるものがそれを隠すなんてなんかかっこいいと思わない?」らしいが、俺はついでに中二病という言葉をマリンに教えてあげた。
十分くらい森の中を歩いていると、さっきほど開けた場所に出てきた。俺たちを見つけるとペティーは俺たちの方に駆け寄ってきた。




