1-24章 赤い目の少女マリン
そこで、俺の目に移りこんだのは、ボロボロの衣服に身を包んだ赤い髪の女の子が草むらに横たわっているところだった。俺はその少女の様子をしばらく確認していたが、彼女はピクリともせずにその場に横たわったままだった。
「とりあえず声だけかけておくか」
俺は恐る恐る彼女に近づいて、声をかける。
「あのー大丈夫ですかー...」
声をかけても反応はなかったので、様子を見るためにとりあえずその少女から離れようと背を向ける。
「ちょっと待って」
「え」
俺は唐突に足をつかまれた拍子につい間抜けな声を出してしまった。
「な、なんか御用ですか?」
「は?あんた、あたしを見て何とも思わないわけ?」
そういわれたので、もう一度地面に座っている少女の姿を一通り見渡した。とりあえず見える範囲で目立った外傷などはなく、問題があるとすれば、そのボロボロで露出が激しい布切れぐらいしか思い当たらなかった。
「そのー...身ぐるみを剥ぐのだけは勘弁してほしいのですが...」
「はあ!?服なんてどうでもいいのよ」
少女は心底あきれたように大きなため息をついた。そして、どういう言うわけか右手を差し出して無言の圧力をかけてくる。
「あのー...ほかに何か...」
「あんたねーそんなこともわからないの。こんなかわいい女の子が倒れてたんだからメシの一つくらい分けてくれてもいいでしょ」
「持ってないの?」と目で訴えてくるが、女の子ならまずその服をどうにかする方が先決だと思うのだが...
「サトル君、大丈夫?」
俺達の会話を聞いていたのか、ペティーが物陰から姿を出してしまう。少女は一目でペティーのことを見ると、目の色を変えて彼女にとびかかる。
「わあ!?」
彼女は何とか彼女のとびかかりを躱して俺のほうに駆け寄ってくる。どうやら狙いはペティーの手に持っているバスケットのようだ。
「何でよけるのよ!」
「何でって...お前飯を食いたいって言ってたな」
「そうよ。その中、食料が入っているでしょ」
やはり、ペティーの持っているバスケットの中の食べ物が彼女の狙いのようだった。俺はペティーに耳打ちする。
「ここは、あの子に食べ物をあげてもいいんじゃないかな。見た感じ何日か倒れこんで飯を食べれてなかったみたいだし」
「で、でも...」
「きっとあげなきゃどこまでも追ってくるよ。ここはおとなしく食料をあげたほうが早いんじゃないかな。」
彼女は、心底嫌がっていたようだが、諦めたように俺にバスケットを預けてきた。まあ、相当あの子におびえていたし、俺が渡すのも無理ないか。この間、以外にも彼女は仁王立ちしながらも黙って俺たちの成り行きを見ていた。
「これはあげるよ。でも、どうか味わって食べてほしい」
俺はそういうと、彼女は目を輝かせて、
「ほんとに!?もちろん、味わって食べるわ」
彼女は俺からバスケットを受け取ると手早く中を開けた。入っていたのは2つの手作り弁当のようなものだった。十中八九、ペティーと俺の分のだろう。
「2つ入ってるけど、もう1つはどうする?」
さっきの横柄な態度はどこへやら、律義にもう1つの弁当はどうするかを聞いてくる。俺は、さっきから俺の後ろに隠れているペティーのほうを振り返る。
「もう一つはどうする?」
「サ...サトル君が食べていいよ。私は...大丈夫だから」
ペティーはそれだけ言ってまた俺の後ろに隠れてしまった。
「そしたら、俺がそれをもらうよ」
「そう」
それだけ言うと、少女は俺にもう一つの弁当を手渡してきて各々食べ始めた。俺が弁当を分けてあげてようとしたけど頑なに「いらない」と言ってきたので、俺がすべて食べてしまった。ちなみに弁当は、特に卵焼きが出汁がきいてておいしかった。
「とてもおいしかったわ。それと何かそっちの子に悪いこしちゃったみたいね」
少女は俺に弁当を返した。これまた以外にも彼女は人の気遣いもある程度できるようだ。
「助けてくれたついでになんだけど...」
少女は自分の胸に手を当てる。
「あなたたちについて行ってもいいかしら?あたし、帰れる家がないのよ」
特に悲観したそぶりも見せず、淡々と自分の状況を言った。やっぱり、俺と同じような状況だったらしい。俺としては同類のよしみとして、とりあえず助けてあげたいが、
「...」
俺は、ペティーのほうに向きなおる。
「私も...大丈夫...だよ。悪い人じゃなさそうだし」
さっきより気持ち少女への態度が軟化して俺もほっとした。ギスギスした雰囲気は胃に悪いからな。
「そういえば、名前を聞いていなかった。何て名前なんだ?」
一連の出来事のせいですっかり忘れていたが、まだお互い名前すらも聞いていなかった。まあいきなりわけもなく襲われてここまで来たからある程度しょうがないが。
「そうね。私もすっかり忘れていたわ。私はマリン。えっとー...ただのマリンよ。これからよろしく」
そして、少女マリンはその透き通った紅の瞳でまっすぐに俺を見て、笑顔で握手を求めてきた。




