1-20章 ご褒美
次の日、俺は緊張した面持ちでペティーの住んでいる家に足を運んでいた。昨日お祝いもかねて遊びに行くという話があったけれど、俺は緊張で夜は一睡もできず、ずっとアンの家をうろうろしていた。俺は現世にいたときはずっと研究に明け暮れていたし、大学も理系だったから彼女はおろか、女友達さえろくにできていなかった。そんなこともあり、俺は朝から寝不足の目をこすりながらできるだけいい服を自分の部屋から引っ張り出してきて、顔をさっと一洗いした。アンの声が台所から聞こえる。
「朝ごはんは大丈夫?」
俺は、ドアノブに手をかけて、振り返ってつま先をトントンとする。
「大丈夫。行ってきます」
俺はドアを開けると村でしか味わえないおいしい空気を肺いっぱいに吸い込む。東京ではなかなか味わえないスローライフを俺は遅れていけてるのだろうか。魔法訓練は除いてだが。
「そんなことより、」
あんまりペティーを待たせるのも悪いから、俺は足早に村の出入り口を目指し小走りで走る。出入り口付近まで来ると、いつの日かのクソガキ3人組がたむろしていた。村長のガキは俺のことを見つけると、
「お前、今日ペティーと遊びに行くんだろ」
「それがどうした」
どういうわけか俺とペティーが遊びに行くことをどこかで聞きつけたようだ。まあ村長の息子だとかなんだからそれくらいの情報網は持っているのだろうか。村長のガキはチッ、と舌打ちをすると、
「何でもねーよ。さっさと行けよ。俺たちも行くぞ」
そう言って村のほうに帰っていった。何だったんだ、と思いつつも俺はペティーの家へ先を急いだ。
--------------------------------------------------------------------------------
ペティーの家に着くと、俺は胸に手を当てて一つ深呼吸をすると、トントンと扉をノックした。
「俺です。サトルです」
少し声が上ずっていたのかもしれない。喉を鳴らす音が自分の耳にまで聞こえてくる気がした。おまけに敬語なんてよっぽど緊張しているのかもしれない。
「はーい」
扉越しからかすかに声が聞こえてくる。わずかな足音が聞こえつつ扉が開かれる。
「いらっしゃい。待ってたよ」
中からひょこっとペティーが顔を出す。彼女の服装は今まで見た動きやすい服装ではなく、白い膝下まであるようなワンピースに土星を彷彿とさせるような大きな麦わら帽子、そして手にはラタンでできた薄い茶色のバスケットを手にしていた。
「...」
俺は彼女の姿を見て、つい固まってしまった。化粧をしているわけでもないのに可愛らしい顔に、ワンピースに麦わら帽子なんて、2次元でしか見たことないような組み合わせに俺は猛烈に圧倒されていた。
「どうしたの?私の顔に何かついてる?」
「い、いや何でもないよ!それよりガジャは今日はどうしてるの!」
俺は慌ててペティーのことからガジャのことに話題をすり替える。
「お父さんは畑で仕事してるよ。最近サトル君との特訓に付きっ切りだったからね」
「そ、そっかー!それは悪いことをしたなー。あははは!」
完全に緊張していることがばれてるような返しをしてしまったが、ペティーは嫌な顔一つせずにこにこと俺のほうを見ている。
「じゃあいこっか」
クルっと体を半回転させるとペティーは森の方へ歩き出した。俺は慌てて彼女に追いつくと、横に並んで一緒に歩き始めた。




