2-51章 優秀な魔法師
その後、リリーネをとらえていた男3人は俺たちに降参し、俺たちは彼らを木に縛り上げていた。しばりつけるための縄はというと、
「俺に任せろ!」
といってダンクは杖の中から5メートルほどの縄を取り出した。本当に4次元ポケットのようにダンクの杖からは何でも物が出てくる。男のうちの一人が苦しそうに悶えながら俺たちの方を見上げる。
「俺たちをここでリタイアさせなくていいのか?」
魔力人形のためにリリーネを捕まえ、挙句魔力人形もリリーネも取ろうとしたこいつらの性根は腐っているが、何もここで脱落させるほどのものではないと俺は考えた。せいぜい、半日飲まず食わずでいさせることくらいが彼らに与える罰にはちょうどいい。
「そんなことはしないよ。ただ彼女にあんな仕打ちをしたんだから、しばらく大人しくしてほしいだけだ」
すると、俺の言葉に男はクククと悪い顔で笑った。
「魔法師志望がそんなにいい子ちゃんでいいのかよ。甘いことばっか言ってると足元をすくわれるぜ」
ここまで来てまだそんなことを言う余裕があるのかと俺は半ば呆れ気味だった。しかし、リリーネは彼らの前に立ち仁王立ちした後、跪いて座っている彼らの目線に合わせる。男は「なんだよ」と不機嫌そうに言う。
「優秀な魔法師になればなるほど非情な判断でも難なく下すことができる。あなたたちみたいな実力も何もない魔法師崩れは、人に恩でも売っておかないと足元をすくわれるわよ」
「く...」と男はリリーネに何か言い返そうとしたが男は何も言い返さなかった。リリーネは美しく髪をはらうと膝についた土をはらった。
「それじゃあ行きましょうか」
そう言って俺たちは男たちを置いて魔力人形を渡しに朝の海岸まで行く。
「助けてくれてありがとう。とても助かったわ」
「のわりにはあんま感謝されてる感じしないな...」
ダンクは素直な感想を口に漏らし、やべっ、と口を結んだ。
「そう?ごめんなさい。あまり感情を顔に出すのが上手じゃなくて...」
「いや、リリーネさんが悪いわけじゃないよ。今のはダンクの失言だ」
南無南無とダンクは手を前に拝んですりすりと手をこすり合わせた。
「それにあなたも頑張ったわね。クリッピー」
そう言って彼女の足元にくっついて歩いているクリッピーをほめた。そう、今回の作戦はクリッピーを用いた偽装奇襲作戦だった。俺とダンクが魔力人形とリリーネで交渉すると見せかけて、後ろに控えているマリンとクリッピーが奇襲をする。ここにいる動物は魔獣が多いことを逆手に取った作戦でリリーネの救出作戦は無事成功した。
「でも、一つ言いたいことがあるとすれば...」
リリーネの突然の方向転換に俺は背筋をピンと伸ばす。さすがに自分の救出のために自分と人生をともしにしてきたクリッピーを使われたのが癪に障ったのだろうか...
「マリンさんの動き、あれは魔法師の動きとは思えないほど洗練していたわね。私近くで見てて感動したわ」
「え?あたし?」
思わぬところで自分の名前が出てマリンも困惑している。
「体術も優れている魔法師なんてこの歳では見たことがないわ。どこで習ったの?」
「ああ。これは私達の師匠がすごい人でね,,,」
先頭を歩く二人はさっきのマリンの体術についての会話を始めた。さっきまで命の危険もあったというのに、けろっとマリンと普通の会話をする強心臓には俺も驚かされる。クリッピーのことについて何も言われなくてよかった、と俺は胸をなでおろした。
その後は無事に魔力人形を今朝と役目を交代したのだろうか、あくびをかみ殺していたジャンヌに渡した。そして報酬としてかなり豪華なチップをもらうことができた。俺たちはチップをもらうとお互いにハイタッチを交わした。日もちょうど落ち始めたところで俺たちでちょうど今日のミッションの受付が終了したところだった。




