2-50章 想定内の奇襲
「おい、誰なんだよお前ら」
一際ガラの悪そうな男が茂みから出てきた俺とダンクをにらみつける。
「その子をどうか解放してくれないか?」
「こいつの仲間か?悪いがその要望は聞けないな」
そう言って、二人がリリーネを後ろに下がらせ、俺たち二人を警戒する。
「どうしたら彼女を解放してくれるんだ?」
「お前らもそれをわかってここにきてるんだろ?手に持っているそれを持ったまま白を切るなんてできないんだぜ」
そういって俺の手の中にある魔力人形を指さす。俺は汗のにじんだような表情を作って見せる。
「これを渡せば彼女を返してもらえるのか?」
「俺たちはそのつもりだ。そいつがあればこの試験での生活は当分安泰だろうからな」
男たち3人は下世話な表情を浮かべている。
「サトル、ダンク!私のためにそれを渡してはダメよ!」
「うるせー!てめーは人質の分際でいい気になってんじゃねーよ!」
大きな声で目の前で怒鳴られたのにもかかわらず、リリーネはキッと怒鳴った男のことをにらみつける。男は少しリリーネにひるんだようだったが、逃げるようにリリーネから視線を外した。
「と、とにかくだ!それを渡さない限りこの女は解放しない。わかったらさっさとよこしやがれ!」
議論は平行線をたどる。しかし、俺たちからしてみれば、こんな人形一つでリリーネを取り戻せるなら安い買い物だと割り切っている。
「それじゃあ、彼女をお前らの一歩前に出して、お前らも一歩下がれ。俺らもこいつを置いて一歩下がる」
「それだとこの女が逃げる隙ができるだろ。俺たちの誰かを一人つけさせろ」
さすがにこれくらいの小細工は見破ってくるか。俺はダンクと目を合わせる。
「それでいいぜ。ただし、俺もこいつを持つ。お互いカウントダウンして、0になったらお前は彼女の手を離せ。それと同時に俺もこいつをお前らに投げる」
そう言って、ダンクは地面に置いた魔力人形を拾い上げる。
「よし、それでいい。お前ら手出すんじゃねーぞ」
そう言って終始交渉をしていた男がリリーネの隣に立つ。
「サトル、ダンク。考え直して!私なら平k...」
「リリーネ」
俺は言いかけていたリリーネの言葉を封じる。
「俺たちを信じて」
真っすぐ目を見据えて言われた言葉にリリーネはもう何も言わなかった。男たちは不愉快な笑顔を向けながら俺たちのやりとりを見守っていた。
「それじゃあいくぞ。3...2...1...」
そして、両者リリーネと魔力人形の手を離す。
「0!!」
そして、ダンクの手を離れた魔力人形はしての手に渡る。しかし、
「馬鹿な奴らだ!お前らは!」
離したかと思った男の手は寸出でリリーネの背中をつかみ、後ろに投げ飛ばされる。後ろの二人の男がリリーネを受け止める。「く...」という短い悲鳴をリリーネはこぼす。
「残念だったな!魔力人形は俺たちのものだ!そのままお前ら試験をリタイアしやがれ!」
そういって3人一斉に俺たちに魔力を向けてくる。杖から放出される膨大な魔力が俺たちに向けられようとしたその瞬間、
「おい、危ない!魔物が来てるぞ!」
俺は緊張感のある声で目の前の男たちに魔物の警戒を伝える。しかし、男たちは俺の警告を思いっきり無視をした。
「は!そんなこけおどし、通用すると思うな!」
目の前の男は俺の必死のブラフに動揺も見せずに、魔力を今度こそ放とうと杖を俺たちに向け...
「うわあ!?」
すると、後ろで控えていた男の一人が情けない悲鳴を上げる。瞬間、俺たちに杖を向けていた男があっけにとられ後ろを振り向く。
「ほ、本当に魔物の奇襲だ!」
隣にいた男の叫びながら、男は魔獣を駆逐しようと魔力を込める。
「させないわよ!!」
すると、死角からマリンが男を抑えるために魔法を杖に向かって放ち、魔法の攻撃を中断させる。
「ぐは!?」
そして、得意の体術で男をそのまま抑え込んだ。
「くそ、やられたのか...」
ついに一人となった魔力人形を持った男が目の前に立つ俺たちをにらみつける。
「俺は忠告をしたよ。魔物が来たって、その忠告を聞かなかったおまえらが悪い。さて...」
俺は依然仁王立ちで立ったままでいるダンクの隣に並び立つ。
「人形をおいてここから立ち去るか、痛めつけられてここから立ち去るか。どちらか選べ」
もはや選択の余地のない二択を彼らに押し付けた。




