2-49章 ひらめきは突然に
「何とかリリーネを助ける方法はないの?」
俺たちはひそひそと小声で作戦会議を始める。あたりにはさっきのリリーネたちの集団と俺たち以外に気配はなく、遠くで彼らの大声だけがかすかに聞こえてくる。
「普通に殴り合いはどう?」
「リリーネが人質にいる。そんなことできるわけないだろ」
短絡的なマリンの意見に俺は即却下を下す。続いてダンクが手をあげた。
「そのクリッピーが抱えている魔力人形で交渉するのはどうだ?あいつらもそれを欲しているわけだし、それを手放したところで俺たちの明日以降の試験が少しばかりきつくなるだけだ。それでいいんじゃないか?」
「俺たちが魔力人形を渡して、リリーネを返してくれる保証はどこにあるんだ?」
たまらず俺はダンクの意見に反対する。俺も一度はダンクの作戦を頭の中で考えたが、連中が魔力人形を手にしたとして大人しくリリーネを返してくれえる保証はない。
「現状これが一番いい策なのには変わりないだろ。反論があるならほかにいい作戦はあるのか?」
「いや、それは...」
しかし、ダンクの言い分もまた当然だった。理想はリリーネを無傷で救出して、魔力人形も自分の手元に残すことだが、現状その両方をできる策は思いついていない。このままだとダンクの作戦を軸に作戦を立てるしかない。
「グルル...」
クリッピーは不安そうに俺の足元に来ては頭を俺の太ももにこすりつけてくる。
「安心しろ。お前のご主人様は俺が助けて見せる」
このなかで一番リリーネを慮っているのは間違いなくクリッピーだ。この子のためにもリリーネを助けて...
「...!!」
瞬間、俺の中で一つの可能性が出てくる。しかし、それと同時にリリーネに不満を持たれる作戦でもあるという自負もあった。
「どうしたのサトル?」
マリンが胡坐をかきながら俺の顔をのぞく。
「いや、ちょっとできそうな案を思いついて」
「なら早く話しなさいよ」
マリンに先をせかされ、俺はしぶしぶ自分のたった今思いついた作戦を二人に伝える。二人は黙って俺の言うことに耳を傾け、聞き終わるとマリンは腕を組んで、
「いいんじゃない。うまくフォローすればやれないことはないわね」
俺の意見に好印象を示した。一方のダンクも、
「悪くないな、成功率もまあまあ見込める作戦だと思う。なのに...」
ダンクは俺の顔を首を伸ばして覗き込んだ。
「なんだその辛気臭い顔は。何か不満でもあるのか?」
「いや、こんなやり方でリリーネに不評を買わないかと思って...」
俺の言葉に「かーっ!」とダンクは自分のこめかみに手をあてた。
「そんなこと気にしてたらキリがないだろ。今はリリーネを助けることが最優先。違うか?」
「まあ、そうだな」
俺たちの目的はあくまでリリーネを救出すること。もし、リリーネから何か言われたらその時俺が謝り倒せば何とかなるだろう。
「よし、そうと決まれば役割分担だな」
そして、今度はダンクが音頭を取り、作戦にあたる役割分担を各自に割り振る。一分ほどで話がまとまり、ダンクがドンと自分の杖を地面についた。
「よし、それじゃああとは手はず通りに」
「よし、行こう」
俺たちは立ち上がりリリーネを救出するためにそれぞれ配置につく。そして、俺は足元でクリッピーが元気よく尻尾を振っていることに気づく。俺はその頭を撫でてやりながら、その姿を見送った。




