2-48章 荒くれ者たち
「クリッピー、リリーネと別れた場所まで俺たちを案内できるか?」
「ワーウ」
クリッピーは元気よく俺に返事を返すと勢い良く走り出した。手掛かりがない以上今はクリッピーしか頼りにできるものはない。俺たちは急いでクリッピーの後を追った。
「魔力人形を持ったままで大丈夫なの?ほかの受験生が寄ってきたりしないの?」
マリンの不安はその通りで、もし俺たちの予想通りなら魔力人形にまた人が寄ってきて、リリーネのニの前になる可能性が高い。しかし、
「リリーネの奪還と魔力人形の防衛、どっちかに人数を割けばどっちかが手薄になる。3人じゃどう頑張っても人手が足りない。それならリスクを冒してでも3人で行動を共にするしかない」
「それに魔力人形を餌にしてヘイトを集めさせたり、交渉材料としても使えるかもしれないしね」
現在、ラムサー森林では魔力人形集めに多くの受験生が集中している。獲得に苦戦する受験生は漁夫の利のために魔力人形を横からかすめ取ってくる可能性は高い。
「リリーネ、本当に大丈夫かしら...もしかしたら...」
「絶対助けるよ。俺はもう誰も失いたくなんかない」
マリンは俺の言葉に目を丸くした。普段俺は、こんなに強い言葉を使わないからマリンも困惑しているのかもしれない。ダンクも俺たちを勇気づけるように元気よく声をかけた。
「そうだな。俺も兄弟と同じ気持ちだ。人死にはもうたくさんだ」
「ペティーは死んでないわよ」
マリンから鋭い視線を向けられ、ダンクも「悪い悪い」とマリンに謝罪をした。リリーネと別れてそんなに距離は開いてないはずだから。いるとしたらここらへんだろう。そう考えているとかすかに前方から声が聞こえ始めた。
「クリッピー」
俺は先頭を走るクリッピーを呼び止める。するとクリッピーは俺の呼びかけに答えて俺たちの足元に近寄ってくる。この子は本当に人間の言葉がわかっているかのように素直で賢い子だった。よっぽどリリーネのしつけがしっかりしているのだろう。
「マリンとクリッピーはここから後ろに離れて。俺とダンクが先行する」
魔力を持ってをれを隠すのが難しいであろう魔力人形とクリッピーを俺は後ろに下がらせる。少しでも前でしゃべっている相手に気取られたくなかったからだ。俺とダンクはできるだけ気配と魔力を殺し目の前の相手にゆっくりと近づいていく。すると開けたところに三人の男と一人の女が何やら話をしていた。
「だから、魔力人形なんて知らないわ」
「嘘つくんじゃねーよ。ついさっきお前の近くには魔力人形の反応があって急にその反応が遠くに行ったんだ。自分の仲間に魔力人形を預けて自分が囮になった。ああ?そうだろ!」
強い語気にもかかわらず、目の前の銀色の髪が特徴的な女性、リリーネはひるむことなく相手をにらみつけていた。
「そんな目をしても三対一じゃどうにもできないだろ?さっさと魔力人形の位置を吐け」
「だから知らないと言っているのがわからないの?あなたたち脳の海馬は正常に働いている?」
「んだと!?」
一触即発の雰囲気だが、男がリリーネに手をあげることはなかった。しかし、リリーネがいつ散々な目に合うかは時間の問題であった。早急にリリーネを安全に救い出すための作戦を考える必要がある。
「まだリリーネにも余裕がありそうだし。いったんマリンたちと合流して作戦を練ろう。いいか?」
「そうだな。まったくあいつもなかなか図太い野郎だぜ」
ダンクもリリーネの神経の図太さには舌を巻いているようだった。しかし、そう楽観視できるほど安全な状況でもない。俺たちは一度リリーネたちから自然を外し、マリンたちのもとへと帰っていった。




