1-13章 誰が為に
「自分に才能があると思うか?」
その真剣なまなざしで聞かれた問いに応えるように俺も、
「俺に...おそらく魔法の才能はない」
初日のあのざまを見れば答えは言わなくてもわかることだった。
「でも...」
俺は、もう一度ガジャと目を合わせる。そこには、厳しくも人を正しく見定める透き通った目が俺を見据えていた。
「それでも俺は、この力に可能性を感じている」
「...」
ガジャは黙り込んでいる。自分の答えを最後まで聞きたいのだろうと勝手に解釈する。俺は話を続ける。
「俺は昔から出来損ないで何をやってもダメな奴だった。周りの奴らより物覚えも悪ければ、運動もできないし、頭も悪かった」
俺は嫌だった現実世界の幼少期を思い出す。今よりはるかに周りも環境も劣悪だったあのころ。言い訳はしない。それでも、俺は人よりちょっとだけ生きづらい家系に生まれてるという負い目があった。
「魔法でなくてもよかったのかもしれない。あなたが偶然この村にいたから魔法を勉強したいと思ったのかもしれない。でも、俺はただ...」
俺は深呼吸して息を整える。目の前にいるガジャはなぜか目を大きく見開いている。俺は不思議に思いながらも精一杯の笑顔でいう。
「誰かに認めてほしかっただけなんだ」
俺の今までの人生は苦しいだけの出口のないトンネルをひたすら走っているだけの人生だった。求められているのは結果や金、それ以外は二の次どころか捨てろとまで言われてきた。苦しくはなかった。結果さえ出せば俺の周りに人は残ってくれた。それでも、
「俺は、ずっと一人だった」
手に大きな雫が一滴だけ落ちる。そこで初めて俺は自分が泣いてるのだと気づく。俺は慌てて自分の目を手でごしごし拭く。ガジャはここまで黙っていたが、俺の独白を聞き終えると、
「まだまだ若いのにいろいろ背負いすぎじゃ」
言葉こそとげとげしかったが、言い方に叱っている様子はなく、むしろガジャは俺に近づくとその大きな手で俺の頭をなでてきた。
「大丈夫じゃ。お前さんは立派な魔法師になれる」
彼の言葉には一切の迷いがなかった。彼から立派な魔法師になれるといわれたことは、お世辞でも嬉しかった。彼は10分ほど歩いていた足を止めると、ここらへんでいいじゃろ、と足を止める。
「よし、試験は合格じゃ。それではこれから、」
と前置きをする。やはりこの問答は試験の一環だったのだなと改めて思った。そして、
「サトル、お前を"魔法師"としてワシが立派に鍛え上げてやる」
そして。俺は魔法師としての第2の人生がスタートした。




