2-38章 魔力人形回収ミッション
お互いに自己紹介を軽く済ませ歩いている途中、ダンクはおもむろにこういいだした。
「俺の予想だと、今日までにかなりの人数が脱落しているとみてたんだが...」
ミッションが行われる浜辺までの道中、ダンクは手に付けているバンドを見ながらそう言った。
「というと?」
「いやな?兄弟には前にも言ったけど、魔法師っていうのはボンボンが多いわけよ。だから、食料や寝床の確保、魔獣への脅威への対処とかやることが多いわけよ。だから、試験の半分になる3日目に限界がきて、脱落するやつが増えるとみてたんだ」
「それはわかるわ。私もあなたたちがいなかったらかなり危ない状況だったわ」
隣にクリッピーを連れ歩きながらリリーネもそう答えた。幸い、俺はキャンプの知識などがあったため、経験がなくてもある程度何とかなったが、親に守られて、知らない場所での生活に慣れていないような生活を送ってきた子供たちにとっては、ストレスがたまることこの上ない。ましてや、本来俺たちの年齢は体の成長や、心の発展の最中であるため他人の目線や言動に敏感になってもおかしくない。
「だが、どうも俺の計算と違う結果になってるんだよな」
そういってダンクは手に持ったバンドを操作する。俺もバンドを操作して試験の残り人数を確認する。バンドの表示によると「残り47人」という表記が確認できた。ペティーもこの中に含まれていると考えると、この3日間で13人が脱落している計算になる。
「1日あたり6人くらいか。妥当なペースじゃないか?」
「いや、俺の考えだと受験者の中で同盟を組んで、20人規模の組織として動いているとこがあると考えてる。それだけの大人数であれば、指示できる人間さえいれば効率的に食料の回収や、魔物への対処ができるようになる。少人数じゃ、食料の確保はできても魔物への対処は大人数よりもどうしても手こずっちまうからな」
そういってダンクはバンドの開いているメニューを閉じる。
「ダンクの気にしすぎなんじゃないの?結局は生き残れば全員合格なんだし、あたしたちはあたしたちで頑張ればいいじゃない」
「敵が魔物だけだったら、それでもいいんだけどな」
不穏な物言いに俺は思わずダンクの言葉に口をはさむ。
「まさか、徒党を組んだ受験者が少人数の受験者を狙って脱落させようとするってことか?」
「すべては可能性に過ぎない。俺が今言ったのは全部絵空事になれば何も問題はない。でも、警戒しといて損はないだろ?」
ぜひともそんな物騒なことは起きてほしくないと俺は心の底から願っていた。そして、段々と日の光がさしてきて、昨日も来た浜辺が顔を出した。
「お、今日も人はいるな」
いつも通りバンドでのミッションの通達の連絡もあり、多くの受験者が浜辺に集まっている。
「それではこれより、本日のミッションの説明を行う」
今日のミッションの説明の担当はゼラウのようだった。昨日までいたジャンヌの姿は今日は見えない。
「今日行うミッションは、このラムサー森林に配置された5つの魔力人形の回収だ」
そういってゼラウは右手で魔力人形を持ち上げる。いつの日か見た魔力人形をここでお目にかかるとは思ってもいなかった。
「制限時間は本日の日没までとする。一人が複数の魔力人形を獲得することも可能だ。回収数に応じてチプを付与する。質問がなければこのまま本日のミッションを開始する」
誰からも声が上がらず、それをゼラウが首を振って確認する。
「それでは本日のミッションを開始する。健闘を祈る」
短くゼラウがそういうと受験者は一斉に散らばっていく。波乱の3日目が今まさに始まろうとしていた。




