2-33章 想定外
俺はマリンを背中に背負ってダンクたちのもとに向かう。散々暴れまわって疲れたのか、マリンは俺の背中で寝息を立てながら眠っている。さっきいた場所まで戻ってくると、ダンクとリリーネはその場で立ったまま俺たちを出迎えた。この二人は律義に俺との約束を守ってくれていたようだ。
「すまない。やっとマリンが落ち着いて、今は眠ってるよ」
そうして俺はマリンを近くの地面にゆっくりと下ろし、そっと寝かせておく。マリンのことだから、ペティーのために相当無理したに違いない。今は思う存分寝かせてあげた方がいい。
「あれを止めたのか、兄弟」
ダンクは半ば驚嘆を含んだ声色でそう問いかける。リリーネも彼に同調するように一つうなずいた。
「特別なことはしてないよ。ただ、ペティーのことは俺が来たから心配しないで、ってそんなことをマリンに伝えただけだよ」
俺がそういうと、ダンクはいきなり大声で高らかに笑いだした。リリーネも「本当に?」と言わんばかりに疑問の目を向けていた。
「あなた、狂ってるわね」
「え!?」
ここまで特に言葉を発していなかったリリーネに久しぶりに言われた言葉がそれだと俺も少々傷付くのだが。しかし、ダンクもまだ腹を抑えながら目元に浮かぶ涙を拭いていた。
「いやー面白いやつだな。俺もあいつを止める方法をいろいろ考えてみたものだが、まさか対話でとめて見せるとはな!完全に想定外だ」
ダンクはあっぱれというように、俺の肩に手を置いた。俺もあれでマリンの暴走を止められるとは正直思っていなかった。でも、
「あいつとは、短い間だったけど一緒に住んでいたから...なんとなく言いたいこととか、何を思っているのかわかるんだよ」
マリンは短気で、だれにでもかみついて、それでも大切な人のためにがんばって、自分を犠牲にする。俺なんかよりよっぽどいいやつだった。それがあんなに我を忘れて暴走するなんてよっぽどマリンは疲れていたのかもしれない。他の人より感情の動きが激しいとは思うけど、あそこまで振り切れているのは初めて見たからだ。
「ちょ、お前、まじか...」
「ちょっと、話を聞かせてもらおうかしら」
ダンクとリリーネが俺にズズズっと俺に近寄ってくる。あまりの気迫に俺も少し後ずさる。なんか俺はまずいことを言っただろうか。
「一緒に住んでるって、あなたいま何歳?」
「お、俺?今は13だけど...」
取ってつけたような設定だが、怪しまれることはないだろ。そう思っていたが二人の顔はさらに暗くなっていた。
「お前、13って。まあ、そんな感じはしていたが、生活費はどうしてるんだ」
「生活費は母親というか、母親代わりの人に出してもらってるけど...あ!?」
そこで俺はダンクとリリーネが何について勘違いしているのかがよくわかった。俺はなるべく早口でダンクとリリーネに俺とマリンがそういう関係にはないことを説明した。最初は二人も疑問の顔を浮かべていたが、次第に俺の話に納得してくれたようだ。しかし、リリーネは俺の話を聞き終えるとそっと胸をなでおろしたのに対し、ダンクは不満そうに唇を曲げていた。




