表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
[連載]転生した俺は誰だ?  作者: Re:vi
第2章 バルセルク魔法学校入学試験編
130/190

2-32章 思考を超えた先に

俺は一歩また一歩、目の前の「少女」にゆっくりと近づいていく。先ほどまでの荒れ狂った感覚は鳴りを潜め、幾分か彼女は落ち着きを取り戻していた。しかし、彼女の紅に染まった眼は未だにそのままだった。5mほどの距離を開けて俺は立ち止まる。この場には俺を含めて5人しかいない。しかし、今俺の意識の中に存在しているのは、俺とマリンしかいない。これで思う存分彼女と向き合うことができる。マリンは近づいてきた俺に敵意を向けるように構えを取る。俺もそれに倣い、右手と右足を前に出し、左足を少し引き体を少し正面から傾けた。


「!!」


気が付けば一瞬の出来事だった。俺は寸でのところで顔を直撃するはずの攻撃魔法をほぼ反射で回避する。俺は回避行動と同時に地面を蹴り、彼女へとの接近を図る。彼女は俺から距離を取りながら軽い攻撃を繰り返す。無論軽いと言っても、並みの防御魔法では受けきることができず、俺は致命傷を回避しながらも確実にダメージを追っていく。このままでは確実にじり貧になる。俺はデカい石の陰に隠れて呼吸を整える。


「まだ...いまじゃない」


ほぼ無意識に口から言葉が零れ落ちる。しかし、この時の俺は自分の思考が口から洩れていることなど何ら気にしてはいない。すでに、この戦いは勝負とは別の次元で争っていると頭の中で理解しているからだ。俺は精神を集中させて自分の中の魔力をできるだけ抑えようとする。


「ダメだ。時間がない」


次の瞬間、遮蔽に使っていた大岩がいとも簡単に粉砕される。俺は彼女とは反対方向に今度は逃げるように走る。彼女は俺が逃げるのを許すまいと俺の後ろを追ってくる。


「ダメだ。思考を止めるな」


右足の次に、左足を出して、その繰り返し。自身の行動の行動のために脳のリソースを使ってはいけない。思考しろ。マリンを止めるための手立てを。理解しろ。あいつが願っていたことは何だ。


「そんなことはわかっている」


右足に軽い衝撃が走る。まだ走れると体がGOサインを出す。俺は乱れるように放たれる高出力の攻撃を何とか回避する。思考と行動のタイムラグが限りなく0に近づいていくような全能感が体を支配する。


「今...」


俺は左足を軸に急ブレーキをかけ、右足に体重をかけないように半回転する。マリンの笑顔を最後に見たのはいつだっただろうか。無駄な情報をデリートして、必要な情報だけを右脳に保存していく。情報の整理はパズルと一緒だと俺は思う。リンクしいている情報をつなぎ合わせ、不必要なピースは存在しない。でも、正しく組み合わせないと答えは見つけられない。そんな感覚。マリンとの顔が間近に迫る。今の彼女には、およそ表情や感情というものが存在しているのかも怪しい。ただ一つ言えることは、


「マリン―-―-―-―-」


俺はいつの間に彼女の背後に回っていた。最後には思考より先に体が動いていることに俺は不思議と何も思わなかった。この時の俺にはそんなことは些細な問題だった。マリンは一瞬の間に俺の方に向き直る。自分に攻撃が来ると思っていたのだろう。しかし、俺は彼女に攻撃魔法などは一切使わなかった。


俺はただ彼女を正面から抱きしめた。


本能が先に彼女を抱きしめなければいけないと警告をしていた。俺は自身の行動の理由を後から思考する。彼女はまるで氷漬けにされたクマのように固まって動かなかった。そして、最後のピースをはめ、彼女にかけたかった答えが頭の中に浮かび上がった。そして、


「マリン、もう大丈夫。俺がいるよ」


彼女は黙り込んだまま何も言葉を発さなかった。しかし、マリンの体はこの蒸し暑いラムサー森林の中なのにもかかわらず、小刻みに震えていた。マリンの心臓の音をはっきりと感じることができる。そして最後に、崩れ落ちるように脱力した彼女の体を俺はしっかりと受け止めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ