2-27章 誇りを纏って
「あんちゃんたち、なかなかやるな!あたし惚れそうになったぜ」
「よしてくれよ。俺は3位だぜ。大したことないぜ。あんたこそ若いのによくやるな」
「いや、そういうのはいいから...」
先ほどまで順位を競いあっていたのが嘘かのように、上位3名の男女が愉快に会話を弾ませている。俺はその中の一人に近づいて話を中断させる。
「ダンク!早く、早く着替えを済ませてくれ!」
「おいおい兄弟。急にどうしたんだ。切羽詰まったような顔をして」
俺は少しの時間も惜しかったのでかいつまんで状況を説明する。話の理解が速い彼は、話の途中で、「わかった。少し待ってくれ。一分で出てくる。」といって更衣室の方に戻っていった。
「ってお前サトルだったのか」
俺は焦る気持ちを抑えながら、見知った声に過剰に反応してしまう。あまりの焦りっぷりに気づかなかったが、そこにいたのは、若干の汗を全身にかいていたルークだった。
「ルーク、久しぶりだな...」
「ああ、でもさっきのあの男との会話。ペティーの様子がよくないみたいだな」
ルークもあの短いやりとりから俺の状況を察したらしい。唯一頭の上に?を浮かべた女だけこの会話に遅れをとっていたが、なにも気にした様子はなかった。
「俺も手を貸したいところだが、俺の方も少し立て込んでてな。お前に迷惑をかけたくないから、別行動する。力になれなくてすまない」
「ああ、お前はお前で試験を頑張ってくれ。俺は絶対ペティーを助けるよ」
あわゆくば、と思っていたが、ルークの方の状況もあまり芳しくはないらしい。淡い期待を持ったが現実はそう甘くはないようだ。
「あたしはついて行ってもいいか?」
会話が途切れたのをいいことに女は自分の豊満な体を俺たちに見せつけるように正面を向く。俺はかなり目のやり場に困っていた。
「お前は絶対行かなくていい。余計な迷惑になる」
「そうか。ならばここは潔く引いた方がいいな。君たちに迷惑がかかるのは些か腰が引けるからな」
彼女の高貴で大胆なふるまいは見るものを魅了するほどのオーラがあった。この試験には歳に分不相応な性格や気品あふれる者たちが本当に多いと感じる。二人とやりとりしている間にダンクが着替えをすまして戻ってきた。
「待たせたな兄弟。早くいこうぜ。ああそれと、俺の取り分はお前らにあげるよう試験官には話はつけといたから、チップは好きに使ってくれ」
「よし、細かい話は道すがらするからとりあえずいこう」
俺はダンクを連れて先を急ごうとしたとき、後ろから「ちょっと待て」という二人の男女の強い制止の声を聞かされる。俺とダンクはそのまま振り返る。
「そのチップは受け取れない。それはお前が実力で手にした成果だ。試験官には明日にでも取りに来るように伝えといてやる」
「彼の言う通りだ。私は他者から施しを受けるほど弱い人間じゃない。あまり私を失望させるなよ?」
ダンクからは呆れと軽蔑の目、女からは強い圧迫感とダンクを試しているような視線を向けられる。ダンクは彼ら二人の強い想いのこもった視線に肩をすくめる。
「わかったよ。ともに肩を並べた仲だ。お前らの気持ちを無駄にはしない」
ダンクの言葉に二人は満足そうにうなずいた。
「早くいけ。ペティーがお前たちを待ってる」
「そうだな。貴公らの健闘を私も祈っている」
そして、今度こそ二人は俺たちを見送る。俺とダンクは二人と別れるとリリーネのもとに向かって、彼女の先導のもとペティーたちのもとへと向かった。




