2-22章 深刻な状況
あたしは、まだ意識がボーっとしている中で目をさました。あたりはまだまだ暗く、夜明けまで時間があることが分かった。私の膝の上には、スースーと寝息を立てながら眠る女の子がいた。あたしはその子の頭をそっと触った。
「...」
あたしはなるべく音をたてないように自分の頬を叩くと、目を思いっきりこすった。眠気に襲われて数時間ほど眠っていたのかもしれない。今はそんなことをしている場合ではないのに。
「ペティー...」
私は、その愛らし顔を右手でそっと撫でた。彼女のほんのりと熱い感覚が自分にも伝わってきた。時はまだ日が十分に上っていたところまで遡る。
「ここはどこ...?」
あたしは突然の転移の術式に困惑をしていた。さっきまで隣にいたサトルとペティーは近くにはいない、完全に一人でこのだだっ広い森林に放り込まれた。
「サトルはとりあえず大丈夫だとは思うけど...」
あいつは何とか一人でもなんとかなるとは思うが、問題はペティーの方にあった。歩きながらとりあえずペティーの方を探してみるが、一向に見つかる気配はない。それにこの暑さ。体調が普通なあたしでかなりくたびれそうになってるのに、私よりも体が弱く、体調が不安定なペティーだったらリタイアも視野に入ってくる。
「何とか探さないと...」
あたしは自分の目の前にあるうっとおしい枝をかき分けながら、右も左もわからないまま進み続ける。試験の性質上、なるべく魔力は温存しておきたいが、親友のために魔力を出し惜しみするつもりはなかった。ところどころ休憩をはさみながら、どんどんと当てもなくさまよい続ける。何人か受験生を見かけたが、いずれもペティーではなかった。しかし、大切な親友との再会は思ったよりも早くに起きた。
「ペティー!!」
30分ほど当てもなく歩いていると、大木を背に横たわっている黄色い髪の少女を見つける。それは紛れもなくペティーだった。彼女ははつらそうにしながらも、自分に声をかけたぬ主の顔を見る。
「マリン...ちゃん...?」
か細い声で彼女は自分の名前を呼ぶ。あたしは急いで彼女に寄り添い、そして彼女がありえないほどの高熱にうなされていることが分かった。
「何も言わないで大丈夫だから」
あたしは短く彼女を制すると、ペティーのバッグに入っていた水をペティーに飲ませる。今日はとりあえずペティーのそばにいるのが無難だろう。しかし、この地域はあたしの記憶通りだたら、低級だが魔獣が出没する地域でもある。いくら低級とはいえ、ペティーをかばいながら魔獣と戦うのはかなり苦戦を強いられるのは間違いなかった。
「ペティーは寝てていいわよ。あたしがずっと起きておくから」
「でも...そしたらマリンちゃんが...」
「そんなの気にしてないで、早く寝ちゃいなさい」
あたしがそうなだめると、ペティーの反感もむなしく、ペティーはゆっくりと私に体重を預けてきた。ひとまずはこれでいい。食料や魔獣の心配、他にもいろいろなことが心配だけど、あたしにはまだ頼れる人材がいる。
「サトルが必ずあたしたちを探しに来てくれる。その間、私がペティーを...」
守らなくては、と強く心に誓う。今はあいつに頼らなきゃいけないのは癪だったが、あいつならこの状況を打開するための策を思いついてくれるはずだと、そんな予感がしていた。




