2-18章 二人の行方
「そういえば、聞き忘れていたんだが、」
ダンクは立ち止まって、俺のほうに振り返る。時間は正午を少し過ぎたあたりで、森の熱気が最高潮に熱くなる時間帯である。ダンクは、額の汗を右手で拭うと、
「お前の探している友達は、どんな感じの子なんだ?」
ダンクに言われて気が付いたが、確かに俺はこの男にペティーとマリンの特徴を伝え忘れていたことに気づく。俺は慌てて二人の特徴について簡単にダンクに伝えた。
「うーん、赤色と黄色の髪の女の子か...道中に何人か受験者は見かけたが、そんな髪の女の子は見かけなかったな」
「まあ、そんな簡単には見つからないか...」
ラムサー森林は、地図で見る限り相当広大な面積を持つ森林だ。そう簡単に目的の人物は見つからないだろう。
「そうだ。ダンクは魔法探知は使えるのか?それだったらすぐに二人を見つけられるかも」
俺は魔法探知はあまり得意ではないが、ダンクほどの魔法の使い手なら魔法探知で二人を見つけられるかもしれないと俺は思った。しかし、ダンクはゆるゆるとかぶりを振った。
「いんや、魔法探知はそんな万能じゃない。普段から一緒にいる奴は、その個人に対して魔法探知をかけることもできるが、俺はその二人のことを全く知らない。だから、二人の位置を特定することはできない」
要するに魔力を発しているもの、例えば、適当な魔法師や魔獣の位置を特定することはできるが、ペティーやマリンと言った特定の誰かを見つけるのは現時点では困難であるらしい。
「まあ、地道に探すしかないってこっちゃな」
ダンクは励ますように俺の肩をトントンと叩いた。
「俺の方こそ悪かった。勝手に頼っちゃって」
「気にすることはないぜ。それより、会っていった受験者にその女の子たちを見たか話を聞こうぜ」
とダンクの頼もしい声が俺を鼓舞する。地道に探すしかないわけだが俺は二人との再会をあきらめたわけではない。ダンクの言う通り、俺たちは受験者を見つけ次第、二人の行方を聞くことしか今はやることがないだろう。
「あそこの女の子にまずは話しかけた見るか」
しばらく歩くと、そこには俺よりも頭一つ大きい白髪の長身があたりを見回している。この膨大な面積の森林では一期一会の出会いが大事だろう。俺たちは、その女に話しかけようと近づく。
「なあ、そこの...」
ダンクが女に話しかけようとしたその瞬間、俺たちの死角にいた白い獣が俺たちに襲い掛かる。咄嗟の出来事だったのにも関わらず、ダンクはそれをしっかり防御魔法で防ぐ。
「あなたたち、何者?」
白髪の女は、警戒心を強めた切れ長な目で俺たちをにらみつける。そして、さっきダンクを襲った白い獣は彼女のもとへ帰っていく。あれは彼女の能力と何か関係があるのだろうか?
「いやいや、俺たちはあんたに少し話が聞きたかっただけだ」
ダンクは極力物腰柔らかに、女に対して言葉を選んで話す。女は警戒を続けたままダンクの言葉に何も返さない。
「赤と黄色い髪の女の子を見なかったか?」
「赤と黄色い髪の女の子...?」
女は困惑しながらも、頭の中で今までに見かけた受験者を頭で検索をかけているようだった。しかし、
「ごめんなさい。そんな子は見かけてないわ」
「そうか邪魔して悪かったな」
ダンクはあっさりそのまま引き下がると、俺の手を引いてそのままその場を後にした。
「あんなあっさりした感じでよかったのか?もっと深堀してもよかったんじゃ...」
「勘違いするな。兄弟」
ダンクは立ち止まると、俺の目を厳しい目つきで見つめる。彼の黄金のように輝く目は、見たものを委縮させるほどの迫力がある。
「この試験の合格条件は、5日間生き残ることだ。定石としては、見知らぬ奴には、俺みたいな変り者でない限り、関わらないのが普通だ。ましてや、それが女の子だったらなおさらな」
この入学試験は、ダンクの言う通り、5日間生き残ろことが合格条件だ。魔物や同じ受験生同士の無駄な争いを避けることがこの試験で生き残るすべであるかもしれない。確かに、俺の考えは自分本位だったかもしれない。
「すまん。俺が自分ことしか考えてなかった」
「気にするな兄弟。まだ日が落ちるまで時間はある。それまで聞き込みを続けていこうぜ」
ダンクはハッハッハと盛大に笑うと、よくわからない歌を歌いながら歩き出した。本当に、この男は俺の想像以上に頼りになる人物かもしれない。




