2-17章 魔法の杖
「本当に手伝ってもらっていいんですか?」
「ああ、兄弟が困ってるなら助けるのが筋ってもんだからな」
俺は、目の前のダンクと名乗った青年に、一緒にこの試験を受験した友達を探していることを伝えると、快くこれを承諾してくれた。正直、一人だとかなり探すのに骨が折れていただろう。
「ダンクさんは、何でここを受験しようと思ったんですか?」
俺は、隣を歩く長身にこの試験を受けた理由を尋ねる。見たところ、体格や身長からして、少なくとも俺やペティたちとは明らかに年齢が違う。少なく見積もって18歳と言ったこの男は、俺の質問を聞いて痛快に笑った。
「さん付けなんてよせやい、兄弟。少しばかり魔法について勉強したいと思ってここを受けたんだ。ここを受けるにしては俺の年齢は少し遅いけどな」
地面に生い茂る草をかき分けながらダンクはぐんぐんと進んでいく。俺は彼の背中を見失わないように必死についていく。
「そういえば、魔物に襲われていたから、兄弟の名前を聞いてなかったな」
「ああ、そういえば...」
魔物に襲われるという悲運に見舞われたせいで、かの恩人に名前を言う機会をすっかり逃してしまった。俺は、やっとの思いで彼の隣に並び立つ。
「俺の名前はサトルです。改めてさっきはどうもありがとうございました」
「敬語なんてよせやい。サトルっていうのはいい名前だな」
ダンクはニッと歯を見せて笑うと少し休憩するか、と俺に声をかけた。きっと俺がダンクについていくのがきつそうだったから気を使ってくれたのだろう。その気遣いは俺にはとてもありがたかった。
手ごろな木に腰を掛けると俺はダンクに聞きたかったことを聞いてみる。
「さっき、魔物に襲われている時何で俺を助けてくれたんですか?」
今回の試験内容は、生存が合格の試験である。裏を返せばほかの受験者を見殺しにすれば、自分の合格の確率は格段に上がることになる。それなのにもかかわらず、彼は俺のことを躊躇なく助けてくれた。これが彼の善意で行われたのか、それともここで恩を売っておくために助けたのか、少しでも情報が欲しかった。
「俺が兄弟を助けた理由?そうだなあ、しいて言うなら...」
ダンクは、うーんと首をひねりながら俺の質問を真剣に考えている。そして彼は、その黄金のように光る黄色い目を輝かせながらこう答えた。
「面白そうだったからだな」
「...え?」
俺は思わずダンクに聞き返してしまった。おもしろそうなんて理由であんな凶暴な魔獣に立ち向かうことができるのだろうか。俺が困惑していながらも、彼は話を続ける。
「だってよ、試験開始早々に魔獣に襲われるなんてめちゃくちゃ面白いじゃねーか。そんなやつについていかない手はないだろ」
さも当然かのようにダンクはそう答える。いや、魔獣に襲われたくて襲われたんじゃなくてただの不可抗力なんだが、説明しても今更無駄だろう。
「それに、兄弟の面白いところはまだあるぜ」
「俺の面白いところ?」
ダンクの目には俺にはまだ面白いところがあるらしい。といっても、試験用に配られたリュックサックと魔法石、試験要綱の冊子と水とバンドと、特別俺自体に変わったところはないはずだが。しかしダンクは俺に向かってビシッと人差し指を向けてくる。
「サトル、お前杖は持ってないのか?」
「え?杖?いや、持ってないけど」
俺は何となくダンクの持っているダンクの身長ほどの大きさのある杖を眺める。先ほどはこの杖から膨大な魔法を放出して魔獣を撃退していた。確かに俺は杖は持ってないけど、それの何が面白いことなのだろうか。しかし、ダンクは自分で納得したように目もとを抑えながら笑った。
「ハッハッハ!どうやらこの世界にはまだまだ俺の知らない面白いやつがいるんだな!」
そう言って彼はそのまま立ち上がると、「行こうぜ兄弟」といってそのまま歩いて行ってしまった。俺はわけのわからないまま彼のことを追いかけるように小走りで走った。




