2-16章 第一受験者
俺はできうる限りの魔法を目の前の魔物に放つ。しかし、その魔物は俺の攻撃にびくともせず、一つ顔を豪快に降ると、もう一度俺に向かって突進攻撃を仕掛けてくる。
「くそ!!」
俺は、もう一度何とか攻撃を回避するが、この突進攻撃はそう何度も避けることができない。飛行魔法があれば簡単に行くのだろうが、あいにく俺は飛行魔法は使えない。今ある手札で俺がこの魔物を退けるにはどうしたらいい?
「とりあえず、適当に魔法を打ってみるしかないな」
俺はそう考え、まずは魔物の顔をめがけて集中攻撃をしてみる。魔物のどこかに弱点があるというのは、ある種の常識だ。おれは魔物と距離を取りつつ、顔をめがけて魔法を放つ。しかし、
「効果があるようには見えないな...」
特段目の前の魔物はひるんだ様子も見せず、また、突進攻撃の構えを見せる。
「それなら、これはどうだ!」
俺は、魔物の胴体をめがけて魔力を集中させる。今度は高出力の魔法を当てることで、隙ができるかもしれないと考え、俺は魔力をためて魔物へと放つ。しかし、
「グールゥゥゥゥゥゥゥ...」
その魔物の胴体には、全くと言っていいほど傷がついていなかった。単に俺の魔力の威力が足りないのか、あいつ自身が固いのかわからないが、俺の太刀打ちできる相手ではないと悟った。となると、俺ができることはあと一つしか残っていなかった。
「勝てないなら...とりあえず逃げる!!」
他の受験者を巻き込んでしまうかもしれないが、今はそんなこと気にしている場合ではない。なんなら、他の受験者にターゲット変更してもらはないと、俺はここで脱落する危険さえある。俺は、魔物から視線を外すと、一目散にそこから逃げた。魔物も俺を逃がさんと言わんばかりに、猛烈な速さで俺の後ろを追う。魔物は、あの巨体からは信じられないほどの速さで俺に追いすがってくる。これでは、俺の体力が先に尽きる。
「くそ、どうすれば...」
俺がどうしようか判断を迷っている時、後ろを気にしすぎていて、前にある木に気づかず思いきり衝突する。
「いてて...」
「おい、あんた。大丈夫か?」
その木と間違えるほどの体躯を持った男が俺に手を差し伸べる。今回の受検者だろうか?しかし、今はそれでどころではない。
「い、今魔物に襲われているんです。あなたも逃げましょう!」
「魔物?ああ、あれか」
彼は、ルークよりもさらに一回り大きい長身で奥にある魔物を見据える。
「は、早く逃げましょう!?」
しかし、その男は全く動こうとせず、むしろ手に持った杖を構えて臨戦態勢にまで入ってしまった。魔物は大きな咆哮をあげながら、こちらに近づいてくる。
「兄弟、俺の後ろに隠れてな」
その男はそういうと、杖から莫大な魔力を放出させ、魔物に放つ。瞬間、地面から巨大な先端のとがった大岩が出現し、魔物の体を貫いた。魔物は情けない声を漏らしながら、そのまま動かなくなった。俺が手も足も出なかった魔物をこの男は一瞬にして蹴散らしてしまった。
「あ、あなたは...」
「猪突犀は、外皮がかなり硬い魔物だが、反面下の腹の部分はとても柔らかい魔物なんだ。魔法師じゃ、かなり倒すのが難しい魔物だな」
目の前で息絶えた魔物に対して、彼は得意げに解説を始めた。彼は、手に持った杖の先端をドンと叩きつけて、こう名乗った。
「おっと、名前を言うのを忘れてたな。俺の名はダンク。お前もバルセルク魔法学校の受検者だろ。これからよろしくな。兄弟」
と。




