2-15章 ラムサー森林
転移術式で飛ばされた瞬間、俺は薄暗い森の中へと飛ばされていた。あたりに人の気配はなく、さっききまで一緒にいたペティーとマリンのいる気配は感じ取れない。俺は慎重に立ち上がると、身を低くしながらゆっくりと歩いていく。
「...」
俺は手に持った試験要綱の冊子にもう一度目を通す。今回の試験は5日間生き残ろことが合格条件だ。さらに、過度な暴力行為、すなわち人を死に至らしめるような行為などは禁じられているが、裏を返せばそこまで出なかったら恫喝などして、受験者をリタイアに追い込むことは容認していると言える。実力主義と噂のあるバルセルク魔法学校らしい試験内容ともとれる。また、初日と最終日はチップのためのミッションは行われないため、その初日となる今日は腰を落ち着けるための寝床を確保することが再優先だろう。
「それと同時に、ペティーとマリンとも合流しないとな...」
マリンは最悪あの性格だから一人でも問題ないだろうが、ペティーは体調も優れないうえに、戦闘はあまり得意ではない。万が一、他の受験者に狙われでもしたら、リタイアも視野に入れなければならなくなる。しかし、
「あっつい上に、木が邪魔すぎる...」
ここ、ラムサー森林は、今のところものすごい暑さと、うっとおしい木々のせいでかなりストレスが強いられている。踏みつける地面がかなりぬかるんでいることから、この雨の影響で蒸し暑い気候になっているのか、と予想することができる。この調子だと、体力に自信のないペティーはさらに危ないと予想できる。
「しかし、手掛かりが全くないないな...」
5分ほどあたりを適当に歩いてみたが、人っ子一人見つけることはできない。さらに、地図によればこの地域の北側には、そこそこ大きい集落があり、その近くにあるこの森林があることもわかった。俺は適度に休憩もはさみながら、手に持った水を一口飲む。当然、5日間をこの水だけで生き残ることなど不可能なので、適当に川などを見つけて、煮沸して飲むことも必要だろう。
そうこうしているうちに、あっという間に30分が立つ。以前、二人の行方はいまだにわからない。俺は、焦る気持ちを抑えながら、必死に手掛かりを探している。地面がぬかるんでいるため、足跡などからヒントをもらえるかもしれないからだ。そうやって地面を見ながら歩いていたその時、俺は奇妙なものを見つける。
「なんだ、これ?」
その足跡は、まず大きさ的に人間のものではないことはわかる。さらに、そのあたり一帯は、何者かによって踏み倒されているように、木々がない更地の状態になっている。
「これって、まさか...」
俺が確信に至るまさにその瞬間、遠くから地響きと共に、グレーの体をした巨体がまっすぐにこちらに近づいてくる。俺はそれを何とか避けて回避する。
「こいつ、獣か?いや...」
現世ではおそらくサイが一番似ている動物だと思われるが、その目は爛々と光っていて、ただの動物だとは思えなかった。実物は初めて見るものだが、一目見てそれが何なのかはっきり分かった。
「こいつが魔物か」
ゼラウがなぜ、この試験が生き残ることが合格条件にしたのか、なんとなくわかるような気がした。それは、ラムサー森林が魔物の巣窟となっている場所であり、ここで生き残れなければ、バルセルク魔法学校に入学する資格もないと言いたいからだろう。俺は、目の前に立つグレーの色をした大きな体に、できうる限りの魔法を放った。




