2-14章 試験開始
その後の説明は、特段変わったもののルールはなかった。試験での過剰な戦闘行為は失格扱いになる点や、指定区域でのむやみやたらな破壊行為を禁ずることなどが書かれてていた。さらに、試験の中ではいくつかのミッションのようなものが用意されており、その中で試験で獲得可能なチップを手に入れることができるらしい。その中でバルセルク魔法学校の補給テントで水や食料の購入もできるらしい。ただし、その価格は相場の3倍ほどで、各ミッションで1位を取らないと相当入手が困難な価格設定になっている。また、最初に1L分の水と指定のリュックサックが支給されららしい。
また、各受験者にはバルセルク指定のバンドも支給された。このバンドではマップの確認や残り受験者の数、ミッションの通達など便利な機能がある。特にマップの確認やミッションの通達などの連絡事項は、今回の試験でより重要度が高いものになるだろう。サバイバル試験の最後にバンドを回収し、紛失した場合はテントまで足を運ぶことで再配布してもらえるらしい。
「それでは、準備のできたものからバンドと魔法石、リュックサックの配布を行う。順番に取りに来るように」
全ての説明が終わり、バンドと魔法石をもらうために受験者たちが一斉に動き出す。つられて俺たちも床から立ち上がる。
「俺たちも行こう」
「うん」
「ええ」
二人がうなづくと、そのまま列に並んで試験官からバンドと橙色の魔法石、リュックサックを受け取る。バンドを手首に巻き付けると、マップの情報や受検者の様子がすぐに確認できる。残り受験者60名という表示から、今回の受験者が60人いることがわかる。
「それでは、バンドと魔法石を受け取ってもないものはいるか?いた場合、速やかに挙手をするように」
ゼラウの掛け声に数人が首を横に振ったり、無反応なのを確認し、ゼラウはコホンと一つ咳払いをする。
「一つ、最後に君たちに伝えることがある」
ゼラウは最後に改めて俺たちの顔を見渡しながら言う。
「試験では"ミッション"という形で試験とは別のイベントも用意されている。こちらには極力参加することを強く勧める。そうすれば、試験を有利に進めることができるだろう」
これは試験要綱にも記載してあった内容のうちの一つだ。この言葉が受験生にどのような影響を与えるか俺たちにはまだわからない。
「それでは、これより今年度のバルセルク魔法学校入学試験を行う。合図と同時に転移術式が発動し、その瞬間から試験が開始となる。では、健闘を祈る」
そう宣言すると、床に書かれていたであろう術式の文様が浮かび上がると、その文様が光だし俺たちは試験会場となるラムサー森林へと飛ばされた。
「今期の受験生はどうよ?何人受かると思う?」
「うーん、10人は欲しいよね。欲を言えば20人は欲しいけど、ゼルはどう思う?」
ジャンヌが俺に気軽に話しかけてくるが、俺はそれを軽くあしらう。試験官として、これからあっちでもやることはたくさんある。
「何人受かろうが生き残った者が次の試験に進む。ただそれだけだ」
「ぶー、そんなのはわかってるよ。ゼルの個人的な考えが知りたいだけ」
「そんなのは俺たちの考えることじゃない。さっさとラムサー森林へと向かうぞ」
「あー、あそこ熱いから嫌なんだよねー。いいなーエミュとアルはここに残っていいんだもんねー」
いつまでたっても文句をたれ続けるジャンヌに俺は頭を抱える、しかし、そのふくれっ面のジャンヌをエミリーゼが優しくたしなめる。
「仕方ないでしょ。ここから緊急出動できる1級魔法師と治療ができる治癒術師は必要なんだから」
「なんで私がゼルと一緒に行かなきゃいけないのよ!?」
「それは、お前が副試験官で、役割上の消去法で選ばれたって感じだな。まあ、頑張れよ」
「もー!少しは私に優しくしてくれたっていいじゃん!!」
俺はそんなジャンヌに冷ややかな視線を送ると、さっさと荷物をまとめてラムサー森林に行くための準備を整える。
「アル、ここの片づけは任せたぞ」
「おう、早くいってこい」
「ジャンヌ、お前も早く準備をしろ。まだまだ先は長いぞ」
「はいはい、わかりましたよーだ」
そういって、二人の魔法師は飛行魔法を利用して即座にこの場から姿を消した。二人の男女はもう一組の男女の背中を静かに見送った。




