2-9章 あとは祈るだけ
「こんな豪華なのいいの?」
「心配しないで。一年祭の時はもっと豪華な食事が待ってるんだから」
今日のアンが作った食事は、これまでのものとは一線を画すかなり豪華な食事だった。しかし、一年祭では、これより豪華な食事が作られると思うと入学試験をより頑張る理由ができるというものだ。
「それじゃあ、いただきます」
皆で手を合わせて、目の前にある食事を食べ始めた。最初に豚の丸焼きのようなおいしそうな肉を口に放り込む。
「うーん、おいしい!!」
マリンも同じ肉に手を伸ばしたようだが、とても満足そうに夢中でその肉に手を伸ばしている。
「おい、ちゃんと俺の分も残せよ」
「何言ってんのよ。こういうのは早い者勝ちでしょ」
そういってマリンは自分の取り皿に肉をどんどんのせている。俺は全く、とため息をつくとほかの食材にまんべんなく手を伸ばす。そんな俺たちのやりとりを幸せそうに眺めるアンは、両手で頬杖をつくと、
「サトル、マリン」
アンの優しい声が俺たちの名前を呼ぶ。俺たちは食べている手を止めてアンの方に視線を向ける。
「あなたたち二人は、私とは血がつながっていないけれど、愛情をもって育ててきたつもりだわ。そんな二人がバルセルクを目指しているだけでも私は誇りに思うわ」
一つ一つの言葉をかみしめるようにアンは言葉を紡ぐ。そうだ。今回の入学試験は俺自身のためだけではない。アンやガジャ、ウィットネスのみんなの期待も背負って合格の二文字を持って帰らなければならない。
「絶対に合格して見せるよ」
「もちろん、あたしもよ」
「わかってるわ。でも、絶対に無茶はしちゃダメよ。無事に帰ってくること。それだけを言いたかったの」
そういって、アンは卵の入ったスープを一口飲んだ。俺とマリンもお互いに顔を見合わせて食事を食べ進めた。
ご飯の後は、日課である魔法書の読むのもそこそこに、早めに床に就いた。しかし、布団に入ったからと言ってすぐに寝られるわけではない。むしろ、明日の試験への不安や緊張からなかなか寝付くことができなかった。
「って、これじゃあ遠足前日の小学生みたいじゃないか」
と一人で自分にツッコミを入れると、壁とは反対側に寝返りを打つ。ちょうど布団からは机の前にある夜の光がさす窓だけが見える。
「ペティー、大丈夫かな」
俺は昼間の時にあったペティーとのやりとりを振り返る。あれは遠回しに俺への告白をしていたのだろうか。それとも、単なる普段お世話になっている親友にたまたま一年祭というイベントがあったから、贈り物をしただけなのだろうか。そもそも、俺みたいな人間は女の子にもてるのだろうか。頭のなかの思考がまとまらず、ぐるぐると堂々巡りしている。
「いや、深く考えるのはよそう」
俺は途中で脳の回路をシャットダウンさせると、少しでも寝られるように軽く目を閉じる。今俺がペティーにしてやれる唯一のことは、ペティーの快復を祈ることだけだ。そして、試験が終わったら俺のやることは決まっていた。
今度は俺がペティーに告白をして、正式に二人で恋人になろう、と正直に伝えることだった。




