2-4章 お前らと一緒に
「この期間は入学試験の準備でバルセルクは忙しいんじゃないか?」
「いえいえ、私は息子が今年受験することは内部の人間が知っていることですので、準備段階から除外されているのです。ですので、この期間は試験に関する情報統制という名目で休暇をいただけてるわけです」
「なるほど、そうじゃったのか」
魔法交流会が行われてから、ルークとリックに会うのはかなり久しぶりだった。今回この二人がわざわざウィットネスまで足を運んできたのは、どうも入学試験のことではないらしい。
「実は、皆さんにはお礼もかねて、ルーラルと息子の近況をお伝えしようとこちらに伺ったのです。ほら、お前から言いなさい」
リックが自分の息子であるルークの背中をぐいぐいと押す。しかし、ルークは父親の行為を嫌がるように、
「いや、親父から言ってくれよ」
「いや、自分で言いなさい。ほら、最近は自分で頑張って友達も作ってるじゃないか」
「な!?」
唐突のカミングアウトにルークだけでなく、俺たちも驚かされる。あの誰にでも険のある目つきをするルークが、まさか友達を作るなんてこの短期間で何が起こったのか。
「...。あの後、魔法に興味のあるやつがちょくちょくあっちから声をかけてきてくれて、ルーラルである程度魔法が使えるのは、ライアーと俺ぐらいだ。そんで、多分消去法で俺に声をかけてきてくれる人が増えたんだろう」
「まあ、あのクソガキとあんたなら、苦渋の選択であんたでしょうね。選択肢が少なくてルーラルの子もかわいそうだわ」
「おまえ、いつも一言多いよな」
マリンの容赦ない辛口評価に、俺は軽くお灸をすえる。まあ確かに、魔法マウントを取ってくるライアーと、目つきが怖いだけで特に害のなさそうなルークだったら、後者を選びたいという気持ちはわからなくもない。
「その過程で何人か友達もできたんだ。これはお前らのおかげだ。その...ありがとな」
いつもは歳不相応な、冷静でどこか達観したような印象のあるルークだが、今日の彼は友達ができたことを恥ずかしながら伝える思春期真っ只中な男の子、という感じがして新鮮だった。
「どういたしまして」
俺が素直にそう伝えると、ルークはまた恥ずかしそうに自分の髪をわしゃわしゃと触り、照れを隠していた。
その後は、大人組と子供組でしばらく談笑していた。魔法師志望が4人もいるので、魔法に関する話や、お互いのプライベートについても話した。そして、あっという間に時間が過ぎ、「ルーク、そろそろ帰るぞ」とリックがルークに声をかけた。
「お前らと次会うのは入学試験の時だな」
「ああ、そうだな」
入学試験がどんな内容のものかは俺にも未知数だが、何事もなければ、ルークはバルセルク入学者の再有力候補の一人になるだろう。
「...」
「...?」
何か言いたそうに口をもごつかせているルークは、自分の乾いた唇を下で舐めると、
「俺は、余裕で受かるだろうけど...お前らと一緒にバルセルクに行きたい。だから、絶対受かれよ」
それは、彼の自信家な側面と、俺たちへの気遣いを兼ねた彼なりの言葉だったのだろう。彼の不器用な感情表威に俺は頬を綻ばせると、
「ああ、俺たちとお前の約束だ」
そういって、俺はルークに右手を差し出した。ルークはその手を数秒眺めてから、俺の手を取った。入学試験まであと一週間弱。俺のバルセルク入学の合否を決するまでのカウントダウンは刻一刻と迫ってきていた。




