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行け行け!クレマンティーヌ  作者: 御重スミヲ
74/78

74、往路


 夕刻になって夫が帰ってきたので、ことの次第を話し、勝手をしたことをわびる。


 一応ね。私はこれでいいと思って動いてるけど、それが常に正しいわけもないし、夫の男爵としての思惑も、仕事面での都合も把握しきれてるわけじゃない。

 なるべく情報共有するようにはしてるけど、互いに話せないこと、あえて話さないこともある。それが私たち夫婦だ。


「何を言うか、よくぞさばいてくれた。部下たちも大いに感心していたぞ」

「そう言っていただけて安心しました。それで、件のマッケンジーの血縁を名乗る(・・・)男のことなのですが……」

 私が先ほど思い付いたばかりの案について説明すると、さすがに驚いた様子のグリム男爵。


 シャールに確認させたところ、容姿といいその言動といい、マッケンジー辺境伯家の嫡男に間違いないそうだ。

 とどめとばかりに、乾いたものに着替えさせ回収した服をあらためると、目立たない位置にマッケンジー辺境伯家の紋章が刺繍されていた……あいつ、本当にバカだ。


「ふむ。私は人質にして交渉するくらいしか思いつかなかった。その場合、あの青年は確かに有効な取引材料ではあるが、切り捨てられれば如何(いかん)ともしがたい。そなたの顔つきを見るに、その案の成功率はけして低くはないようだ。奇抜ではあるが、はまれば強力であろうしな。よし、かけてみよう。そなたにばかり負担をかけるがよろしく頼む」

「何をおっしゃいます。私たちは運命共同体、夫婦ではありませんか。どうぞお任せください」


 急ぐなら船を使うとよいと夫が勧めてくれた上、その他の手配はシャールが滞りなく行ったので、大変スムーズに予定をこなすことができた。


 まず、某侯爵家に先ぶれの手紙を出す。

 これは大事なことなので自分で書く。


 それから、船の到着地となる領地、馬車で通過する領地に、それぞれ着港や通過の許可を求める手紙を出す。

 まあ、この国は一応、王のもとにどの貴族も協力し合ってることになってるので、こちらは形式的なものだ。


 荷物(・・)が少々うるさいけど、まあ、我慢できないこともない。

 なんといっても、思った以上に移動時間を短縮できたからね。

 先ぶれの手紙が、ちゃんと先に着いているか心配になったくらい。



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