69、保身
グリム男爵やあらたにその傘下に入った集団が生業にしてる海運業は、じつはめずらしい職業だ。
ふつうは商会が独自に船を持って、船乗りを雇い運行する。
その場合、自前で護衛専用の船を用意する者もいるし、傭兵を船ごと雇う者もいる。
これまでは、せいぜい自国の港に寄港しながら海岸沿いを回るくらいで、海を渡る者はいなかったしね。
我らがご先祖様が海運に特化したのは、もともとは沖をゆく商船に張り付き、してもいない護衛料をせしめたり、航行を妨害して通行料をとったりしてたことが無関係じゃないようだ。
はい、完全に海賊行為ですね。
自分たちが商品を仕入れるのではなく、ただ運ぶ。
前世ではめずらしくもないけど、この世界ではこのグリム男爵領周辺にだけ見られる変わった形態らしい。
だからこそ、王家が目を付けたのだろうけど。
無事、無所属の武力集団をまとめ上げることができたので、今度は彼らの支配地域も含めて、グリム男爵領として国に認めてもらわなければならない。
さて、どうしたものか。
まず、メグ・ライム・クロスバーへ手紙でお知らせ。
第一王子を通して王家の腹積もりを探る。
第一王子のアドバイスというか、お願いとしては自力でマッケンジー辺境伯に、グリム男爵領との新たな境界線を認めさせて欲しいとのこと。
おぅ、そうそう手助けはしてもらえんわな。
彼と王との関係はわるくないようだけど……というのも、第一王子の保有魔法が判明してからも、王は態度を変えなかったらしい。
もともと王としての立場、多忙さもあって、あまり親子らしいかかわりは持てなかったにしても、うん、賢い。
一方で、王妃はあれだし、となれば同腹とはいえ弟たちは少なからず影響を受け、付き従う者たちがそれを助長するのはお約束。
彼もなかなか厳しい立場であることがうかがえる。
まあ、基本的に第一王子とは損得なしの付き合いのつもりだけど、一度会ったきりの男の子をこうも応援するのは、同情とか義侠心からではない。
会ったこともない第二王子や第三王子に比べれば、もちろん愛着はあるけどね。
どう考えても第一王子が次の王になった方が国の乱れが少ないし、魔法に対する認識が多少は良い方に進みそうだし。
その立場を確固たるものにすることに貢献すれば、うちの旦那は出世できるし、グリム男爵領の安寧、ひいては自分の立場を安定させることにつながるんじゃないかって打算があるわけさ。




