68、金食い虫
カーペンター子爵家が総力を挙げて、しかし秘密裏につくりあげた魔法機関は、言うまでもないくバカ高かった。
前カーペンター子爵監修のもと、巡視船にそれを取り付けたグリム男爵は、巡視とレースのための訓練を兼ねたテスト航行を慣行。
さらに一月に渡る耐久試験を経て、手持ちの船すべてにこの魔法機関を取り付けることを決定した。
当然だけど、その多くが外航船。
まるで規模が違うけど、カーペンター子爵家に言わせれば一度つくったものなので、ほとんど機械部の作業時間分しか時間はかからないとのこと。
順次、取り付けられていく魔法機関。
こんな時、我らがグリム男爵マックスはけして費用を惜しまない。
それは消耗品にかんしてもだ。
部下たちはそれを知ってるから、動力石をどれだけ消費しようとまるで気にしない。
もともと帆船だ。風のある時や、潮の流れに乗った時は動力石を節約することもできるのに、行け行けどんどんとばかりに船を進ませる海の男たち。
……やはりスピードは人を魅了するのか。
概算だけでも目玉が飛び出るどころの騒ぎではないけど、それ以上に稼げるんだよなぁ。
何しろ、海を越えて大陸に行って帰ってくるまでにかかる期間が、いままでの三分の一。
単純に考えてもまず、積み込む水や食料を節約できる。
さらに注水の魔法を覚えた船乗りが少なくないので、もしもの時も飲み水にかんしては安心。
さらに全員がもれなくバングルを装着していて、たとえばクラーケンに遭遇した場合、退治はできないまでも、魔法でひるませ全総力で逃げることができる。
人相手なんて言わずもがな。
もう、怖いのは嵐くらいで、そこは彼らの経験に頼るしかないわけだけど。
次いで、うちの船で運ばれてきた有機的な積み荷の鮮度が格段にいいことは、すぐに商人の間で話題に。
その上、乗組員にしっかり休暇をとらせても、航行回数を増やせるから、単純に運べる荷物も増えるわけだ。
そんな中、船レースの結果を見るまでもなく、グレン男爵の旗下に入りたいと申し入れてきた人が一人。
マックスが競合相手の中でも信用できると真っ先に思い浮かべた人物だ。
マックスはこれを受け入れた。
すでに船や馬車、倉庫の空きスペースを融通し合う協定は結んでいて、それがうまくいってたことも大きい。
グリム男爵として彼を騎士に任命。……親子ほども歳が離れてるんだけどね。
グリム男爵を上にいただくこと以外は、これまで通りに組織をたもち、独自の路線で活動することを許した。
さらに、希望するなら魔法機関を自前の船に取り付けることを許す、ただし費用は自己負担でって。
そりゃ買うよ! それを目当てに頭を垂れたと言っても過言ではないもの。
これを機に、周囲の組織は次々に臣従。
グリム男爵はよく人を見て、そう簡単に騎士の位は与えなかったけどね。
もれなく魔法機関の買い取りは推奨。もちろん転売などの裏切りはけして許さなかった。
まあ、うちの領でもカーペンター子爵領でもないことになってるものだし。
これがどれだけ画期的で、なおかつ自分たちの生命線だって少しでも理解してる者は、目先の利益やマックスに対する嫉妬なんぞでおかしな行動をとる奴を積極的に見つけて即、漸してたとかしないとか。
一応、前カーペンター子爵に確認したけど、この機関にしろバングルにしろスクロールにしろ、カーペンター子爵家の付与魔法ありきのものなので、分解し観察したところでけして真似はできないと太鼓判を押されたよ。




