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行け行け!クレマンティーヌ  作者: 御重スミヲ
51/78

51、朗読


 今度は羊皮紙を山ほど持ってこさせて、いざ翻訳!


 ペン先を自分で削るとなったらキレそうだけど、羽根ペンって柔軟性があって意外に書きやすい。

 ただ、インクがなかなか乾かないんだよなぁ。


 吸い取り紙、ほしい。前世、映画で見たような砂でもいいんだけど、あれって何でできてるんだろう?

 まあ、右から左へ書く言語じゃないし、結局、乾くまで放っておけばいいって話になるんだけどさ。


 せっせとサイモン文字の候補を描いてたせいか、ある程度私の頭にも刷り込まれてたみたいで、すぐに対照表がなくても訳せるようになった。


 あとは子供向けの教本でよかったよぅ。

 一ページの文字数がだいぶ少ないから。


「まだインクが乾いてないから気を付けてね。あなたは、サイモンと一緒に間違いがないか確認を……いえ、そうね。サイモン、あなたがお父様に読んで聞かせてあげるのはどうかしら?」

「う、うん。はい」


 緊張気味に紙面に向かったサイモンだけど、最初はたどたどしく、でもすぐにすらすらと読み上げる。

 やばい、涙で視界が。


 なんとか、一ページ目を彼が読み切る前に二ページ目を仕上げて、あとは必死。

 丁寧にかつ素早く、かつ間違いのないように。

 ぬぉ~、負けるものか。あの月末を思い出すんだぁ!


 敵なのに恩情をありがとう教本……十二ページでしまいだなんて。

 やりきった感いっぱいで顔を上げると、マックスは尊いものを見るように息子を眺めていた。

 あれだね。小学校の授業参観で、我が子が作文を読んでる時の顔。


「サイモン、素晴らしいわ」

「ああ、よく読めていたぞ、サイモン」

 二人して惜しみない拍手を送る。

「ありがとう、本当にありがとうございます」


 サイモンは儀礼に(のっと)ったにしては深い深い礼をして、しばらく顔を上げなかった。

 鼻をすする音がして、でも、そう時間をかけずに顔を上げる。

 鼻は真っ赤だけどね。偉いぞ、男の子。



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