49、対照表
「さて。あ、という音を聞いた時、あなたたちは何を連想しますか?私は蟻ですね」
言いながら「あ」と題した列に簡単に蟻の絵を描く。
それを見て、すぐに反応するサイモン。
「足!」
さすがは少年、頭がやわらかい。
そして、新しい遊びを知った時のようなわくわく感はこっちにも伝染する。
私は、ぱっと思い付いて黒塗りのフットスタンプを描いた。
「あ、すごい、すごいです、クレマンティーヌ。ほんとに足だ」
「ほう」
感心したように声を上げたマックスも、なんとか答えを出さねばと頭をひねってる。
「……網」
まあ、これはこれでわるくない。
「では次は、い、です」
「……それ何、なんですか、クレマンティーヌ。岩?」
「芋です。……岩でもいいです」
「ではその岩の枠を私がもらおう」
「それはずるくない?ですか、父上」
「フッ、早い者勝ちだ」
「……いいですよ。う~ん、イカ!」
サイモン、冴えてる!
デフォルメした絵も会心の出来栄えだ。
「クレマンティーヌ、本当に絵、上手いよ。いや、上手ですよ」
「ありがとう」
心から褒めてくれてるのがわかるから、私も素直に礼を言うよ。
岩のようなジャガイモも描くけどね。
そんな調子で勢いに乗った私たちは、五十音分の連想ゲームを終えた。
あっ、あと数字ね。
いつの間にか一字につき、一人ひとつ案を出すのが暗黙のルールになっていて、頭カチコチの大人にはなかなかつらかったけど。
その中からサイモンに、自分がいちばんしっくりくるものを選んでもらう。
ほぼほぼ彼自身が案を出したものになったけど。なんといっても使うのはサイモンだからね。
それを三枚の薄板に整理。私たちの使う文字との対照表になっている。




