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行け行け!クレマンティーヌ  作者: 御重スミヲ
44/78

44、団らん


 サイモンは一冊の本を(ひざ)の上に乗せて、緊張気味に待っていた。

 本の背を握りしめる指が白くなってる。


「待たせてしまったわね」

「いいえ、大丈夫……お気遣いなく」


「はぁ~、やはり我が家はよいものだ」

 どさりと椅子に掛けたマックスの姿勢は最初から崩れている。


 まあ、息子がお行儀よくしようとがんばってるのに!

 でもまあ、彼は彼でがんばった……行きの馬車の中で、ずっと予行演習をしていて、その通りいやそれ以上に役割をこなしてみせたもの。


 それでも、ちゃんと息子の様子には気付いていて、親子水入らずだとかなんとか言って、お茶の用意が済めば使用人はすべて下がらせてる。


「そんなに疲れるほど遠い、ですか。王都は」

「お父様のそれは気疲れよ。今回は第一王子殿下の誕生記念パーティーに出席して、仲良くしてくださった方も少なくなかったけれど、ずっとあら探しをされていたから。貴族って執念深いのよね。まさか殴って言うことをきかせるわけにもいきませんし。でも、あなたのお父様は立派につとめてらしたわ」

「そう、ですか」


「いや、クレマンティーヌの助けがなければ、それは酷いことになっていただろう」

「そう言っていただけるとうれしいですけれど、私が自信を持って行動できるのは、やはりグリム男爵という後ろ盾あってのことですわ。この国ではまだまだ女の地位は低いですもの。こんなに女の私の言葉に耳を傾けてくださる方は(まれ)だと、日々感謝しておりますのよ」


「仲いいんだ、ですね」

「まあ……わるければ一緒にはいられぬな」

「でも、まだまだお互い知らないことも多いですし、様子見のところもありますわよね」

「む。そうだな」


「ふうん……いや、そうなんですね」

 半分上の空のサイモンがうなずく。

「サイモンは何をしていたのだ」

「……シャールに、マナーを見てもらってた、ました。ずいぶんさぼって、ブランク?があったので、あまり進んでない、ませんが」

「あら、ずいぶんと良くなっているわ。それに自分でどう直せばいいかわかっているのですもの。その分早いし、あとは慣れよ」

「……がんばります」



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