43、帰還
グリム男爵領の我が家に帰ると、扉の脇にサイモンが立っていた。
緊張感が隠しきれてないし、その立ち姿も、私たちの降車を待ってした礼もぎこちないけれど、かろうじて形になってる。
「おかえりなさい、父上。おかえりなさい、クレマンティーヌ」
「ああ、いま帰ったぞ」
「ただいま、サイモン。出迎えありがとう」
いかにも逃げ出したいのを堪えたといった風情で、でも、がんばってる!
「王都はどう……いかがでしたか?」
「うむ。まず、着替えてくるからそれから話そう」
「……すみません。気がつかないで」
「いや、喉も乾いている。茶でも飲みながら、お前がどうしていたかも訊きたい。クレマンティーヌはどうだ?」
お父さん、息子に話しかけられてうっきうき。
私も、彼にどんな心境の変化があったのか、話してくれるなら聞きたいな。
「そうですね。では、サロンに半時後に集合いたしましょう」
「疲れ、お疲れじゃ、では?」
「大丈夫よ」
「嘘ではない。クレマンティーヌはずっと馬車の中で寝ていた。あれだけの揺れの中、なぜあのように安らかに眠れるのか不思議で仕方ない」
そりゃあ、満員電車で立って寝るのに比べればね。
「では、半時後に」




