41、寿ぎ
さて、ゴツゴツぶつかり合おうと、どれだけ身分差があろうと、王族が現れれば私たちは一様に単なる家臣だ。
もっとも第一王子に挨拶する順番は身分の高い順だけどさ。
私の実家の面々と、マッケンジー辺境伯の姿が見当たらないってだけで、確実に面倒事は減る。
招待されなかったのか、されたけどへそを曲げて来なかったのかはわからないけど。
私たちは当分暇なので、やはり暇な人たちと挨拶をかわしつつ、飲食スペースにエスコートしてくれるあたり、うちの旦那様は私のことをよくわかってる!
ふむふむ。高級な材料を使ってるし、さすがは王宮の料理人。ほかとは一線を画してる。
しかし、前世の記憶持ちとしては、まだまだこのレベルかぁと上から目線。
……そろそろ食テロでもしようかな?
そろそろだということで挨拶待ちの列に並ぶ。
男爵である上に新参者だからいちばん最後。
ちなみに騎士は、こういう時はあいさつを遠慮する……数がいすぎてきりないから。
延々とあいさつを受け続ける第一王子もご苦労様です。
「いと尊き御身をこの世に授かりし日を十五たび迎えられましたこと、大変喜ばしく存じます」
「洒落た祝いの言葉をありがたく思う。グリム男爵、遅くなったが結婚おめでとう」
「過分なお祝いありがたく、また恐縮でございます」
「グリム男爵夫人も、駆けつけてくれてうれしい。その素晴らしい装身具はグリム卿からのプレゼントか。良い色だ」
さっきのやり取りが聞こえてたわけでもないだろうけど。
まあ、人の上に立とうという人は情報を集めるか予測するか、またその両方をしなければならないのだろうね。
「夫ともども第一王子殿下の忠実な臣なれば」
「うむ、これからも勤めてくれ」
「御意にございます」
ここで、スソソソソッと下がろうとしたのだけどね。
私たちがまだ壇上にいる、いまこの時を狙ったように声を張り上げた馬鹿者が……




