40、新作ドレス
そんなわけで今回の私のドレスの型は基本中の基本。
前世で言えば、皇室の方々がお召しになるあれだ。
でも、その上に同じ海色の総レースを重ねて、舶来品のビーズを散りばめた。
髪は横に張り出した、おすべらかし風。
お雛様を思い浮かべればわかりやすいかな。
怒った時のコブラでもいいよ。
アクセサリーは珊瑚のセット……これでちょっとした屋敷が買えるんじゃないの?
靴は、輸入品だっていうエナメルっぽい魔物の革で作ってみた。
これぞグリム男爵領クオリティーといった仕上がり。
ドレスを作らされた時、旦那様が作らないなら私も作らないって駄々をこねた私も偉かった。
あくまで黒い上着にこだわる彼のためにビロードを選んであげたことも。
この生地、まだ他では見ないもの。
クラバットは私のドレスの友布で、はっきり目立つ、でも下品じゃないサイズの珊瑚の飾りを付けてあげた。
靴はエナメルもどきの例の革で、もちろん型は違うけど私とおそろいだ。
「グリム男爵ならびにグリム男爵夫人、御到着」
以後、うちの主人を馬鹿にしたら承知せんぞ!
笑顔で威嚇しながら堂々入場。
すぐに第一茶会の乙女たちが寄ってきて、再会を喜び合った。
彼女たちをエスコートしてる兄や年若い叔父たちも友好的で、マックスと何やら談笑してる。
そこから友達の友達は友達ってわけでもないけど、次々知り合いを紹介されて、コネが広がっていくものなんだよね。
一方で、聞こえよがしに嫌味をいうやつがいるのもパーティーのお約束。
「男爵風情が、ずいぶん遅いご登場で」
「それになんですの、あの宝石の色」
「まあまあ、あの方はほら、第一茶会のなんですから」
「では、あの噂は本当なのかしら」
「妻よ。私は不勉強でまわりの言うことがよくわからぬ。ぜひ解説をしてくれぬか?」
まあ、マックスったら田舎貴族に徹するつもりなのね。
私を教師役にすえたのも、無知な夫に教えるふりで好きにやり返せってことか。
どの世界も舐められたら終わり……彼自身、誰よりよくわかっていて、それが日々の行動に表れてる。
でなけりゃどうしてあの荒くれ男たちが嬉々として従いますかっての。
「よろこんで。まず貴族のパーティーでは、一応、身分の高い者ほど後から入場するという不文律があるのですわ。高位貴族は全体的に見れば数も少ないですし、そのあたりきちんと守らなければなりませんけれど、下位貴族はそこまで厳しくはありませんね。伯爵より前に来ていれば十分、許容範囲内ですの。宝石の色にかんしては、婚約者同士が相手の髪や目の色と同じものを身につける習慣は確かにありますけれど。成人し、まして結婚などいたしますと、代々伝わる家宝を身につけたり、あけすけに申せば、親しくしていただきたい方の所領の特産品を身につけたり、もちろん自領の品をアピールするよい機会でもありますから、必ずしもパートナーの色を身にまとうわけではありませんの。まして尊き方や、尊敬している方を連想していただけましたら身に余る光栄ですわ。でもねぇ、それがあまりに小さすぎては、色もなにもわかりませんわよねぇ」
「フッ、違いない」
まあ!とかキーッ!とか甲高い声が聞こえてくるけど、声の届く範囲にいた常識人は静かにうなずいてるか、失笑してるか。
目礼してくれる人もいるね。




