34、競技会
「まあ、とにかく警備の方は任せな」
「人が足りんなら、こっちからも出すでの」
「必要な物があればどうぞお声掛けを」
「皆さんありがとう。そのお言葉に甘えて最後にもう一つ、中央広場で競技会をします」
「お?」
「午前中はバザールで賑わうそうですが、昼からはかなり閑散とすると聞きました」
「はい。広いだけに、小々寂しいくらいです」
「競技って、何をするんだ?」
「私がいま考えているのは何か重いものを持ち上げる力比べや、どれだけ食べられるかの大食い競争、一度も途切れさせることなくどこまで長く果物の皮を剥けるかなどですが、皆さん他に何か思いつかれたり、補足があったらお願いします」
「おもしれぇ。持ち上げるんなら碇がいいぜ、準備もしてやる。よ~し、腕が鳴るぜ!」
グレンはすでにやる気だ。
「食わせるんなら船乗りの常食、固焼きビスケットがええぞ。ワシはもうさすがに歯がたたんがな、ふひゃひゃひゃひゃ」
「皮剥きというのは、女性も参加できるようにですか?」
「そうです。力が必要なものではどうしても不利ですもの」
「それではレース編みなどもいかがでしょう。規定の時間内にどれだけ複雑に美しく編めるか。この街の女たちはなかなかに器用なのですよ」
「それはよいですね」
「果物もレース編みの材料も、ぜひ商業ギルドから提供させてください」
「それは……はい。では、参加者の仕上げたレースはそちらに納めるということで」
アーノルドがにっこり。
「さすがはグリム男爵夫人です」
「各部門の優勝者には、魔法のスクロールを進呈しようと思うのですけれど、どうでしょう? お酒半年無料券などの方がよいですか?」
「はへ?」
「ほぅ」
「いやいやいやいや、男爵夫人。誰もがスクロールを欲しがりますよ。本当に!?よろしいんですか?」
アーノルドの礼儀正しさも崩れるくらい大変なことらしい。
でも、すでに現在販売されてるスクロールを制覇した私は、少し前から考えてたんだよね。
男爵邸の使用人で希望する者には割安でスクロールを提供しようかなって。
そのために手配してたものを今回提供する。
「では、そういうことで。お忙しい皆さんをあまり長く拘束しても各方面から恨まれてしまいますから、今日はここまでにしましょう。問題がありましたらすぐに教えてください。対処いたします。また、ここはこうした方がいいのではないか等、何か思いついたらどんな小さなことでもかまいません。教えてくれると助かります。それでは第一回グリム男爵領お祭り実行員会小会議を閉会します」
私が真面目くさってしめると、皆あっけにとられたようで、それからかなり大っぴらに笑いながら帰っていった。




