表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
行け行け!クレマンティーヌ  作者: 御重スミヲ
23/78

23、保険


「クレマンティーヌ嬢は、私の商売をずいぶん良いように思っているのかもしれないが、五(せき)ある船のうち一隻でも沈めばお手上げとなる危ういものなのだ」

「あら、保険はかけておりませんの?」

「保険?」


 私は砂糖のまぶされたナッツを空の皿に一つ取る。

「私が保険業を営む者だと思ってくださいな。グリム卿から五隻分の保険料をお預かりします」

 皿のナッツは五つになる。


「別の方からは一隻分、また別の方からは三隻分、こちらの方は十隻ですか、豪気ですねぇ……さて、嵐にあってグリム卿の船が五隻沈んでしまいました。卿はその旨を私に書類申請します。私は人をやってそのことに間違いがないか調査し、いつわりなく船が沈没したことが認められましたので、卿に規定の保険金をお支払いします」


 皿から一粒だけナッツを取ってぽりぽり食べながら、残りを皿ごと海賊男爵に押し付ける。

「これは私のものか?」

「そうです」

「一粒とったな?」

「こちらも商売ですので」


 まあ、実際はくっそ複雑で面倒な取り決めと計算をするわけだけど、大まかな説明はこんなものでいいだろう。

 正直めんどい。


「ほかの者には損ではないか?」

「考え方ですわね。事故に遭わなくて幸運だったとするのが心の健康のためにはよいと私は思いますが。そのおかげで卿は再出発できますし、商売を畳むにしても、荷主への補填や乗組員の家族へ手厚い見舞いができるでしょう。また、もしもの時の保証があれば、本来であれば躊躇(ちゅうちょ)する大勝負に出られるかもしれませんわ。人命がかかっていることですから、そう簡単に割り切れるものでもないかもしれませんけれど」

「ふむ……」


 ぽりぽりナッツを食べだしたグリム卿もそれでエンジンが掛かったのか、私と競うようにあれこれ食べはじめる。

 はたから見たら異様な空気感だろうね。それを証拠に誰も近寄ってこない。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ