表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
行け行け!クレマンティーヌ  作者: 御重スミヲ
2/78

2、魔法


 貴族を貴族たらしめるものの一つに魔法があって、その素養は遺伝するらしい。

 アボット家で代々受け継がれてきたのは水魔法だ。

 当たり前だけどほかの貴族家から嫁をもらうわけだから、他の魔法が使えるようになっても良さそうなものだけど、そう都合よくはいかないらしい。


 私は一回にコップ一杯、清潔な水を出すことができる。おおっー!

 それを一日に十一回、計二リットルくらい出せるってことだね。

 これってすごいことよ? この発展途上な世界で、旅先でも飲料水の心配をしなくて済む。


 しかし、まあ例によって家の中では馬鹿にされてる。

 いやいや、あんたたちだってせいぜい自転車並みに進むウォーターボールとか、ベニヤ板も貫けないウォーターアローとか、風呂桶の中の水をゆっくり回転させられるだけやん?


 あれだけ威張ってるんだから、消火ホースからの放水並みの勢いで魔物アタックしたり、川の流れを一時的に止めたり、雨を降らせたりしてもいいと思うんだけど。


 クレマンティーヌは大人しい子だけど、彼女なりに現状を打破しようと努力を重ねてきた。

 魔法が発現した五歳の時から毎日、限界まで水を出すことを自分に課してきたのだ……涙ぐましい。

 それでも出せる量も回数も変わらなかった。


 彼女はがっかりしてたけど。

 ノンノン! それは無駄な努力じゃなかったよ。


 はじめは一度水を出したら一時間休まないと再び水を出すことができなかったけど、その休憩時間はどんどん短くなっていって、いまでは連続して水を出すことができる。まあ、コップ一杯分ずつ、一度止まるのはご愛敬だ。

 総量が変わらないのは保有する魔力量と関係があるとか?


 その辺、家庭教師に突っ込んでみたんだけど、すごい迷惑そうに話をそらされたよ。

 なんだよ、こいつもわかってないんじゃないか。

 貴族学院次席卒をあれほど鼻にかけててコレってことは、学院でも少なくとも魔法にかんしてはろくな授業をしてないってことか。


 でもまあ知識は武器。こっちにはネットもなければ、新聞すらない。

 これまで通り大人しく受け身の授業を受ける。「はい、先生」「わかりました、先生」もうこれしか言わない。

 家庭教師、すごく満足そうだ。


 歴史と地理、修辞や手紙の書き方は役に立つだろう。

 計算は……なんでそんなややこしい方法でやるかな? そりゃ三回足せば三掛けたのと同じ状態にはなるけどさ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ