19、騎士
送り迎えさえしっかりしてくれたら、あとは自分たちの婚活に集中していいって条件で、エスコートは王宮勤めの騎士にお願いしてる。
言わずと知れた第一王子のコネだから、勤務態度や性格はいい人たちで、ただまあちょっと強面だったり逆に印象の薄い風貌だったり……
「プクス」「クレマンティーヌにはお似合いよ」姉たちは大喜びで嘲笑ってるけど、バカだね。
こういう男を旦那にした方が、ずっとじわじわ幸せなのに。
鍛えてるから姿勢はいいし、歩き方もさっそうとしてる。
そこへもってきて二割増し格好良く見えると評判の騎士服マジック。
日々体を動かしてるから、文官みたいに変な趣味持ちも少ないって評判よ。
私はとてもいいと思うんだけど、向こうからすると私は対象外……しょぼん。
まず伯爵家ってことで、実家の家格が高すぎる。
そして幼い。ぐっ、自分ではどうにもできないことばかりだ。
彼らは残念ながら容姿のこともあって、婚期が遅れてる人たち。つまり、けっこう年上。
最終的には上司が世話してくれるので、結婚しそびれることはないらしいんだけど。
その場合は絶対にノーは言えないから彼らも必死だ。
王宮の場合メイドですら貴族家の子女で、出会いはたくさんありそうだけど。
彼女たちは意識が高くさらに上をめざすので「我らごときは相手にされぬのです」って……切ない。
さて、パーティー会場に到着したら、まず主催者にご挨拶。
一曲踊って、知り合いをざっと紹介してくれた騎士をエスコート役から一時解放。
お互いにがんばりましょうと激励し合って左右にわかれる。
前世の記憶を取り戻す前のクレマンティーヌだったら、場の雰囲気にのまれて途方にくれてただろうけど。
フフッ。ザ・おばちゃんだった私に恥じらいを求めても無駄だ!