18、デビュー
十二歳になった私は社交界デビューをした……というか、させられた。
もちろん姉たちのついでだ。
まあ、ぎりぎりありな年齢ではあるんだけど、ずいぶん早いって印象は否めない。
どうやら我が父は、私を貴族学院にやる気はないようだ。
別にそれはいいんだ。
次席で卒業したっていう家庭教師があれだから、授業内容は高が知れてる。
でも、ついででもなんでもデビューさせたってことは、うちの豚チャン……まあ、牛サンでもいいけど、出荷可ってことなんだ。
くっ、私だってこんな家とっとと出たいわい!
でも、この発展途上の男尊女卑な社会で、女が一人で生きてくのはかなり難しそう。
平民は多くがそうせざるを得ないわけだけど、女子供が一人で路地裏を歩こうものなら、強姦だの人さらいだのいつあってもおかしくない環境だし。
下手な貴族より豊かな暮らしをしてる大商人でさえ、貴族の理不尽な要求に逆らえないことを考えれば、貴族って地位はキープしたいところだ。
当たり前のように私の結婚相手は用意される様子がないので、連日あちこちのパーティーに顔を出して婚活中。
十二歳で婚活……なんつうシビアさだ。
でも、まあ変な奴を押し付けられるより、自分の目で見て選べるだけいいか。
なんというか、父親にしろ母親にしろ、このアボット伯爵家の将来をテキトーにしか考えてないようなんだよね。
まず、娘を全員嫁にやるなら現段階で、親戚筋から見込みのある男子を引き取って教育しはじめてないとおかしい。
姉たちが非常に高望みして、よしんばその相手を捕まえられたとしても、そういう立場の男はたかだか伯爵家の婿になんてこないだろう。
そうしたら、私にそこそこ使えそうな男をあてがって、なんて流れになる可能性大。
あぶなっ!
伯爵家ってこと以外なんの価値もない両親や姉たちがそのことに気付く前に、自分の人生をかけられる男を見つけなきゃ。
まあ、相手も私を選んでくれるとは限らないんだけどさ。
そこが買い物とは違うところだね。
当然だけど、茶会でも夜会でもサロンでも、招待状がないと参加することができない。
姉たちのように招待されてそうな男たちに粉をかけてエスコートさせるって手もあるけど。
ちなみに彼女らは王太子妃、次点で王子妃の夢もあきらめてない。
どこからその自信がくるのか不思議でしようがないけど、いくつものパーティーをはしごするバイタリティーは純粋にすごいと思うよ。
かくいう私は、第一茶会の乙女たちのコネを有効に利用させてもらってる。
私以外は下級貴族の御令嬢ばかりだから、当然彼らの縁者が開くパーティーは下級貴族が多く集うもので却って恐縮されてるけど、いえいえ、とってもありがたいです。
そもそも私、やっかい事がマシマシの上位貴族は狙ってないしね。