10、衣装
近頃、勤務態度がよくなった侍女たちが、私が茶会に着て行く衣装の心配をしている。
変われば変わるもんだね。
大丈夫よ。姉たちには負けるけど、私だって伯爵家の令嬢。持ってないわけがない。
見栄とプライドの塊のような母親の命令で、ことあるごとに最低限のものは作ってるからさ。
まだ着てないドレスがあったでしょ。流行遅れ?
フフン、この襟と袖じゃろ。ちょっとこれ、糸切ってピーッと取っちゃって。
で、こっちのドレスのレースを外してここに付けてね。
袖? このクソ暑い時期にいらんいらん。破廉恥だぁ? ミニスカは履たろか……
泣いて止められたのでそれは勘弁してあげよう。
まあ、刺激が強すぎるって言うなら、肘上まである手袋をするよ。暑いけど。総レースなら少しはマシかなぁ。
うん、なかなか様になってきた。
こっちのビーズは外して靴に付けよう。お花とハートを合わせたデザインだ。
可愛い、可愛いって侍女たちが夢中になってる。
この世界、まだ綺麗系ばかりで、可愛い系がほとんどないからねぇ。
アクセサリーも、まだ子供なのに宝石ゴテゴテなのはどうかと思うな。
夜会ではなくアフタヌーンティーってこともあるし。
そこで前世の記憶がよみがえる前に、クレマンティーヌが買い求めていたオープンハートのネックレスとイヤリング、そして指輪のセット。
なんて可愛いんだろう。我ながらよいセンスじゃないの!
今回の衣装にもあつらえたかのようにぴったりで、侍女たちも大絶賛。
いやぁ、私も可愛いを愛する気持ちを持ち続けていてよかったよ。
もう自分には似合わないって忙しい生活の中で忘れがちになってたけど、いまの私にはとてもよく似合うもの。
髪はポニーテールにしようかな?
たぶんそういう子はいないと思うんだ。こっちでは子供はたいていハーフアップだから。
前世みたいに、髪を完全に上げるのは成人してからなどの不文律があるわけでもないのは確認済。
となると単なる流行りで、皆、編み方を変えたり、付けるリボンや飾りを変えてしのぎを削ってるらしい。
そんな中で堂々のニュースタイルだぜぃ。
……本音を言うと、少しでも暑くないようになんだけどさ。