7.緊急戦線
転移完了と同時、戦場特有の武器同士のぶつかり合う音が耳に届いた。
「ふむ、もう始っているようだな」
『Yes,マスター。緊急戦戦では転移術者が死亡するか、術者に危機が迫ると転移で砦に戻されます』
なるほど、護衛ならばさもありなん。
今回は転移術者付近からのスタートで固定だったので、多少前線まで距離があるな......。
「いっそここで、護衛戦線を抜けてきた強者を待つのも一興か......。果報は寝て待てと云うしな?」
『Yes,マスター。少しお休み下さい』
「あぁ、そうしよう────と思ったのだがな」
早速お出ましだ。てっきりこの戦線、相手はミズガル兵と思っていたが......
「ヒャッハァ! もっと強ぇのは居ねぇのかぁ!?」「ウオォオ! 力こそ全て!」
......あの二人のプレイヤーの額の角と、何より暑苦しい言動からするに、どうやら相手はヨツン兵のようだな。
大方、互いにミズガルへ攻め込んだところで運悪くかち合ったのだろう。
「お? やっぱ奥には強そうなのが待ってんじゃねーか!」「俺のパワーを見ろ!」
「待ってたというか、今来たんだが.....。 まぁいい、俺はディアデビル。お相手願おう」
やけにハイテンションな長身の男は、一見素朴だがムメイではない長剣を手にしている。
一方恐らく脳が筋肉で出来ているような発言の巨漢は、いかにもといった長柄の戦槌を担いでいる。
未だ2人がこちらに辿り着くまでには間がありそうなので、手持ち無沙汰に一振り。
「ついでに小手調べ、と。アン」
『Yes,マスター。「無謀の一振り」』
「なんだぁ? そんな遠......くぇッ?」「ぐ、ウンッ!!」
こちらへ向かってくる二人組の横幅は大分違うが、頭はちょうど同じくらいの高さにあったのでまとめて狙ってみた。
すると長身の男の首は宙を舞い、巨漢は攻撃を察したのか戦槌を振り回すことで辛うじて難を逃れ、そのまま俺目掛けて走って来ている。
「......ほう、凌いだか。まぁあの程度でやられてしまっては、それはそれで困るのだが......。何より面白くない。然しなんとか片方は残って、こうして相見えたのだから良しとするか。それに──おいお前。剣以外の武器は見ないわけではないが中々に珍しいのでな。俺は期待しているぞ?」
あれではあまり小手調べにもならなかったし、な。
「それは俺もだ! その業、「無貌」だな!? お前を討って俺の力を証明する! 行くぞっ!!」
剣以外の獲物を相手取るのは幾分久方振りなうえ、この男の獲物は戦槌だ。先ずは攻撃を避けつつ様子見といこうか。
僅かに残った俺との距離を一気に詰めた脳筋男は、意外にも大振りではなくコンパクトな連携で絶え間ない攻撃を仕掛けてきた。両手を大分離した位置で柄を持つことで振りの隙を減らしながら、最低限剣の間合い以上のリーチは確保しているようだ。
......意外なことに残念なのは発言だけで、戦いそのものにはちゃんと頭を使えるようだな、こいつ。だが......
「フッ、ムンッ! ぬぇい!!」
「どうした、それは素振りか? 俺には全く当たらんぞ?」
「ええい五月蝿いわ! ちょこまかちょこまかと......!!」
奴の攻撃は空を切るばかり......。これは期待はずれだったか?
俺はひょいひょいと振るわれる戦槌を掻い潜っていたが、様子見はもう十分だ。大体解った。
「振り回しているだけでは、いつまで経っても......俺には、当たるまい──よっと」
上から振り下ろされた戦槌目掛けて不意に切り払い、一旦間合いを切る。
「何か出し惜しんでいるものがあるなら今のうちだぞ? 何もないようなら......もう良い、斬り捨てる」
「もう俺の攻撃は見切ったってか? そう思ったんなら甘い! 見ろ、これが俺の......フルパワーだ!!」
そう言って、力を溜めるようなモーションから、黄色に輝き出した戦槌を大きく頭上に振り被り、奴は互いの間合いの外からスキルの行使を宣言した。
「くらえ、「グランドシェイカー」ァアッ!!」
奴の戦槌が地面に叩き付けられると、地面に亀裂のようなエフェクトが俺に向かって這い延びて来た。
「なるほど。如何にもなスキルだが、中距離相手にも対応出来そうだ。ただ......」
ただ、俺がここまでお膳立てしておいて言うのもなんだが......。
「使いどころは考えた方がいいぞ」
──最後にそうアドバイスを残して、背後から脳筋男の首を落とした。




